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 先日、購入したばかりの喜国雅彦の『本棚探偵の生還』を読む。『本棚探偵の冒険』『本棚探偵の回想』に続く堂々のシリーズ第三巻である。
 念のため、野暮を承知で解説しておくと、本書は確かに漫画家・喜国雅彦の本ではあるが、これはいつものフェチ系漫画ではない。喜国氏はディープな探偵小説マニアにして古書マニアという一面もあり、これは『小説推理』に連載していたそっち方面のエッセイをまとめたものなのだ。探偵小説や古書にはまっている人なら爆笑物のエピソードやネタが詰まった、実に楽しい本なのである。

 本棚探偵の生還

 探偵小説関係のエッセイや古書関係のエッセイは特に珍しいわけでもないが、本書が何より素晴らしいのは、ギャグ漫画家ならではのサービス精神を活かした作りである。
 目に付くところでは、造本自体がバカらしくて素敵。意味もなく函入り二分冊にしてみたり、月報をつけてみたり、その月報が豆本に工作できたり。普通に作るのに比べると相当なコストがかかるわけで、だから定価にも反映してしまうし(なんと2800円だ)、当然、売れ行きにも響いてくる。じゃあ、なんでわざわざこういうことをするかというと、戦前の探偵小説が正にこういう造りであったからであり、探偵小説マニア&漫画家の性とでもいおうか、喜国氏としては、もう自分でそれをやりたくてしょうがないんだろうね(笑)。
 根底は自己満足。ただ、誤解無きようにいっておくが、これは単なる自己満足ではなく、クリエイターが徹底して読者サービスに努めた結果でもある。やはり人に楽しんでもらってなんぼ。この精神があるから本シリーズは面白い。

 内容も相変わらず楽しい。今回は英国の古書フェスタ探訪記や只見線読書の旅といった長編をはじめとして、通常連載分のいわば中編系、あとがきなどをまとめた短篇系と、ボリュームもバラエティに富んでいる。
 個人的にはいつもの企画ネタでカチッとまとめた中編系が好みか。なんというかお笑いに喩えると、オチや構成を計算しつくしたコントのイメージ。文章も読みやすいし何よりテンポもよく、さすがはギャグ漫画家である。

 あと、何より好感が持てるのは、著者ご本人のバランス感覚。これ、意外と大事である。
 エッセイ等で何が気になるといって、著者の常識の度合いである。ここが崩れると共感も出来ないし笑うことも出来ない。「何を偉そうに」とか「金持ちは違うな」となるのも困るし、逆に読者に迎合しすぎるのも嫌だ。喜国氏のエッセイで一番優れているなぁと感じるのは、いつもこのバランス感覚の点なのである。そのうえで、マニアの凄いところ恥ずかしいところを、何のてらいもなくネタにしてしまう。だから面白い。
 思えば、喜国氏より古書や探偵小説に詳しい人は山ほどいるのだが、その魅力をこうして伝えてくれる人はほぼ見当たらないのではないだろうか。実はTwitterである方とそういうやりとりが少しあって、「SFにもそういう人がいたら」と実に残念そうにつぶやいていたのが記憶に残っている。

 なんだか妙に真面目な感想になってしまったが、とりあえず探偵小説マニアや古書マニアで本シリーズを読んだことがないという人がいたら、騙されたと思って一度は読むことをオススメする。こういう楽しみもあったのかと目から鱗である。

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





ちりさん

コメントありがとうございます。
甲賀三郎、たまりませんね。『妖魔の哄笑』も今の基準で読めばさすがにアレですが、探偵小説としては魅力が満載ですね。

「本棚探偵」は絶賛発売中ですので、お財布の事情が許せば、ぜひどうぞ。今回も十分に楽しめましたよ。
【2011/08/13 18:30】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

すみません。通りすがりのものです。
甲賀三郎の「妖魔の哄笑」を読み終えていろいろ検索してて通りかかりました。

この本!第三巻!!出てたのですか!
こちらで知りました。

このシリーズの大ファンなんです。
教えていただきありがとうございます。

本読みに拍車がかかりそうですw

余談ですが、装丁凝ってるようですが、私にはちょっと高いです・・(涙)
【2011/08/13 17:12】 URL | ちり #N2P4DTnY[ 編集]















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