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 DVDで『刑事コロンボ/秒読みの殺人』を視聴。最終第7シーズンの第三作目、トータルでは第四十三作目。

 テレビ局のプロデューサー、ケイは支局長マークの右腕として活躍する野心満々のキャリアウーマン。だが皆には秘密にしていたが、ケイはマークの恋人でもあり、マークの昇進とともに自分も引き上げられることを夢見ていた。
 そんなある日、マークはニューヨーク本社へ栄転することに決まるが、マークにケイを連れていく気はなく、しかも後任の支局長に推薦する気もなかった。それを知ったケイはマークを許せなくなり、殺害計画を練るが……。

 第7シーズンの特徴が、犯人のドラマに比重を置いているのはよく言われているが、同時にミステリとしての弱さもよく指摘されているところ。本作でも、犯行に使った拳銃の処理が杜撰だとか、アリバイの作り方に説得力がないとか、やはりいろいろ問題点は多い。

 それでも本作には、非常に印象的なシーンがいくつか見られる。
 まず挙げておきたいのは、ケイが自分でテープに吹き込んだカウントダウンを聞きながら犯行に及ぶシーン。シンプルながらこのサスペンスを盛り上げる演出が実に効果的で、BGMも相まってのっけから緊張感が高まる。
 もうひとつは、ケイがエレベータの天井に隠した拳銃が、今にも見つかりそうな状態になっているため、金属棒を使って何とか取り返そうとする場面。こちらもコロンボと別れた直後だけになかなかスリリングだ。
 最後にもうひとつ。これは犯行シーンではなく、ケイがマーク殺害を決意するシーンとでもいうべきか。
 マークはケイとの別れに際し、Kのナンバー付きの高級車を贈ろうとしていたのだが、そのキーをケイのグラスに隠していた。言わばサプライズ的な演出を考えていたわけだが、状況や相手の気持ちを考えない鈍感さ、そして自分の価値が高級車レベルということにケイは何よりショックを受ける。捨てられたこと、支局長という後釜に座れなかったことも動機ではあるが、何よりこういう無神経な男が、自分の恋人で吏上司であることが許せなかったのではないか。マークと最後の抱擁をかわすケイの無表情さが、逆にケイの怒りの凄まじさを物語っているといえる。

 思うにこれらのシーンを印象的にしているのは、やはり犯人=ケイという女性の存在感であろう。
 正直、コロンボの相手となるにはやや力量不足の感がある彼女だが、野心の強さ、上昇志向はこれまでの多くの犯人像のなかでもトップクラスである。貧乏からの脱出、男社会での出世、様々な障壁を乗り越えて進むのが彼女の生き方であり、決してそれを隠そうともしない。
 しかし、その姿には余裕がなく、常に切羽詰まったイメージがつきまとう。新の成功者になるための、本当に大事な物。彼女はそれを見つけられないままコロンボに敗れ、それでもまだ諦めようとはしない。彼女の最後に言い放つ「私負けないから」というセリフは、だからこそ虚ろに響き、見るものに苦々しさを感じさせる。

 まあミステリとしてはぶっちゃけ並だろうが、ケイというキャラクターが非常に計算された作りで、それゆえ忘れがたい作品になっているのは確かだ。これぞ、犯人のドラマに比重を置く第7シーズンならではの作品といえるかもしれない。


テーマ:刑事コロンボ - ジャンル:映画





そうなんですよ。表面的には恋と出世欲に絡んだ一個人の犯罪、というふうには作られていますが、女性の社会進出という裏テーマは確かにありますよね。
シナリオを書いた人は、おそらくですが、そういう風潮をこころよく思っていなかったのではないでしょうか。
【2011/08/23 00:09】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

これは昔見たときに非常に印象深かった作品です。
おっしゃる通りケイの存在感が素晴らしいんですが、当時はまだ女性の社会進出がそれほど一般的ではなく(アメリカではもう普通だったのかな…?)、仕事に野心的でも能力が今ひとつで犯罪も杜撰という彼女のキャラや、被害者の彼女に対する扱いが「結局、女なんてその程度」というメッセージに見えてムッとしたものです(^^;
でもケイをこのように描くことで作品として成功したことも確かですよね。
【2011/08/22 19:22】 URL | Sphere #AgXjGueg[ 編集]















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