fc2ブログ

探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

『本当におもしろい警察小説ベスト100』(洋泉社MOOK)

 いつのまにかジワジワと警察小説がブームになりつつあるようで、とうとう『本当におもしろい警察小説ベス100』というガイドブックまで出てしまった。
 版元は洋泉社。この出版社はサブカル系に強い印象があるのだが、近年はミステリ関係でも『図説 密室ミステリの迷宮』や『宮部みゆき全小説ガイドブック』とか『京極夏彦全小説ガイドブック』とか、割とこまめにガイドブックを出している。
 『図説 密室ミステリの迷宮』は実際に買って読んだことがあるが、なかなか好感の持てる作りだったし、そもそもミステリガイドブック好きの管理人としては、おそらく本邦初であろう警察小説のガイドブックを見逃す手はないってんで、さっそく購入と相成った。

 本当に面白い警察小説ヘ#12441;スト100

 ま、なんせタイトルが『本当におもしろい警察小説ベスト100』なので、警察小説のベスト本紹介以外の何ものでもない。これに人気作家のインタビューや対談、識者による座談会、警察小説の簡単な歴史などを絡めた、ごくごくオーソドックスな作りである。全体のボリュームもそこそこあるし、これから警察小説に親しもうかなという人には、まず十分な内容だろう。
 個人的にはもう少し海外物の比率を高くしてもらいたいところだが、ま、これは需要を考えると仕方ないか。

 ちょっと気になったのは、「警察小説」の定義。
 2ページの「introduction」で書かれているが、警察の一員たる「個人」に焦点を当てているのは意外な感じがした。管理人としてはどちらかというと「組織としての動き」に焦点を当てた物語を思い描いていることもあって、この認識の違いは妙である。警察小説はいつのまにそんな読まれ方がメインになったのだ?
 まあ、そもそも本書は「警察小説」の間口をかなり広くして紹介している感がある(なんせ松本清張の『点と線』、エルロイの『ブラック・ダリア』、ポーターの「ドーヴァー」シリーズも、みーんな警察小説に入れてるのだ)。狭義の警察小説で語ると、どれもこれも警察小説とはいえなくなるし、まあ、ガイドブックという性格上、それもやむを得なかったというところか。

 ちなみに前述の「introduction」ではこんな前文がある。

「本書でいう警察小説とは、
 著者が次の三カ条を
 心のどこかにきちんと置いて書いたことが
 読者として感じられる小説である。」

 要するに、読む者がそう思えば、それは警察小説であると。ううむ、そんな(苦笑)。

関連記事

Comments
 
杏奈さん

吉川英梨さんについてはまったく知識ゼロなのですが、ぐぐってみると恋愛小説系の人なんですね。でもamazonを見ると、『スワン』は普通に警察ものみたいだし、どっちなんだろ?
 スワン~これも警察小説?
スワン~これも警察小説?

というか、警察には違いないですけど・・・。
いいんですかねぇ。

> 要するに、読む者がそう思えば、それは警察小説であると。
これにはあてはまる・・・かな。
内容は面白いですし、さっかの吉川英梨さんも魅力的。
吉川さんの人となりは↓のサイトが詳しいです。
http://www.birthday-energy.co.jp

まぁとにかくガイドブック読んでみまっす!
 
jacksbeansさん

海外小説ではそれほど警察小説という括りでクローズアップされる作品は少ないように思います。やはり国産のもので、そういうものが目立ってきた証しでしょうね。

リューインのパウダー警部補ものは、私も好きですね。あのキャラクターは、ピーター・ダイヤモンド警視やフロスト警部に大きく影響を与えたのでは、と個人的には考えているのですがどうでしょう。
 
こんにちは、
警察小説がブームになってるのですか?!

もう面白い警察小説は出てこないだろうと、最近はTVシリーズのモース警部を見るくらいしかないと、あきらめてたのですが・・

ちなみにマイフェイバリットは、M・Z・リューインのパウダー警部補シリーズと、カーター・ブラウンのアル・ウィラー警部シリーズです。
 
ポール・ブリッツさん

おお、チャスティンにペノーとは、懐かしいところを。なんて言いながら私この二人はまったく読んでないんですよね(爆)。でもいつかは読むと決めてすべて収集済みであります(こんなのばっか)。

ちなみに私のお好みは、シリーズで言うとポール・ブリッツさんと似たようなあたりですが、特にマルティン・ベック・シリーズは堪らんですね。ノンシリーズでいくと、ジョゼフ・ウォンボーは当確です。
 
フーチン64さん

確かにガイドブックも、日本で編まれたものと翻訳ものではけっこう採り上げられる作品は異なりますね。お国柄は明らかにありますよね。

ちなみにひとつ面白いガイドブックを挙げろと言われたら、古い本ですが、佐藤圭の『100冊の徹夜本』は悪くないです。メジャー作品ではなく、一癖あるB級の傑作を集めており、当時はこれで知った作品も多かったように思います。
 
警察小説のベストか……。

1位は「フロスト警部シリーズ」で決まりだな。

2位は「マルティン・ベックシリーズ」

3位は「87分署シリーズ」

4位は「カウフマン警視シリーズ」、「パンドラの匣」は大好きな一品。

5位は「ホイット・ピンチョン捜査官シリーズ」、いや異論はあるだろうけど好きなものは好きなんじゃあ!

読書数が少ないので5位までしか挙げられなかったであります。「警察署長」は警察小説と呼ぶには越境しすぎているし、「魔性の殺人」は、面白かった覚えはあるけれどベストかといわれればうーんだし……。

とりあえずガイドブック読むか(^^;)
 
私のへたくそなブログをご覧いただいているとはお恥ずかしい限りです。実は私も貴ブログを時折興味深く拝見させていただいておりました。同好の士がおられるとやはり嬉しいものです。またいろいろ参考にさせていただきます。
最近の記事でも取り上げましたが、こうしたベスト集はガイド的意義だけでなく、その国の読者の傾向や視点を知るという意味でも本当に参考になりますね。初心者にとってのガイドにとどまらず、すれっからしの読者にとっても自分の視点の偏りや限界を知る機会にもなったりするところが、こうしたベスト集の侮れないところかと思ったりもします。
警察小説は自分にとっても比較的未開拓の分野なので、いいガイドをご紹介いただきありがたく思います。

Body
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー