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 『エンジェルウォーズ』をDVDで視聴。『300 〈スリーハンドレッド〉』、『ウォッチメン』といった話題作を送り続けているザック・スナイダー監督の2011年公開作。公開前は当然のように話題沸騰。ザック・スナイダーに言わせると「マシンガンを持った『不思議の国のアリス』」というから、これは観るしかないではないか。
 ところがふたを開けてみるとけっこう評判が芳しくなく、出来に関しては賛否両論。いつのまにか公開も終わっている始末である。そうなると、かえって気になるのが人の性。DVD落ちを首を長くして待っていた作品である。


※本作を語ろうとすると、シナリオの性質上、どうしてもネタバレのリスクをはらみます。できるだけ留意はしますが、以下、ネタバレでもかまわん、という人だけお読みください。


 ジャンル的にはダークファンタジーといえるだろうか。内容はシンプルながら、それほど理解しやすい作品ではない。その理由として、3つの大きな世界が入れ子構造になっていることが挙げられる。

 まずは現実世界。時代ははっきりしないが、どうやら1950年代あたり。エミリー・ブラウニング演じる主人公のベイビードールが、養父に虐待され、挙げ句は妹殺しの罪を着せられて精神病院に幽閉されてしまう。5日後にはロボトミー手術を執行される……という状況。
 二つ目の世界は、いわばベイビードールが現実から逃避するために作り上げた世界。やはり幽閉された世界ではあるが、そこは精神病院ではなく娼婦館。5日後にはある大物クライアントがベイビードールを買いにくるという。ベイビードールはその前に娼婦館から脱出しなければならない。彼女は4人の娼婦とチームを組み、脱出に必要な地図や鍵など5つのアイテムを探し求めるが……。
 三つ目の世界は、娼婦館でベイビードールがダンスを踊る際に展開されるファンタジー世界。ベイビードールのダンスは蠱惑に満ち、見る者すべてを魅了する。その間に娼婦たちはアイテムを入手しようとするのだが、そのシーンはすべてダークファンタジーとしてイメージされる。ナチスや巨大な侍、ドラゴンなど、近未来的ロボットなど、様々な設定と敵が待ち受けるなか、ベイビードールたちはマシンガンや日本刀を手に、壮絶で華麗なバトルを披露する。

 こうして説明すると何となくご理解いただけるとは思うのだが、これを説明らしい説明がないままに映像として見せられると、なかなかに最初は戸惑う。相互の関係が掴みにくく、もたもたしているうちに少女たちのバトルが始まって、印象に残っているのは結局そちらばかりということになりかねない。
 とはいえ、なに、それでも全然かまわない。このモヤモヤはラストに近づくにつれて晴れていくし、三つの世界の関係も自ずと理解でき、本作のテーマも明らかになる。この腹にストンと落ちる感じが実に気もちよい。
 こういう入れ子構造をもった作品では、他に『インセプション』とか『マトリックス』などがすぐ思い浮かぶが、理屈なんかはこれらの映画の方がしっかりしているけれど、見せ方や相互の世界の在り方は本作も全然負けていないし、ラストへの繋げ方などは上回っているのではないか。


 と、まあ、こんな感じでシナリオについて真面目そうに語ってみても、本作の最大の魅力がやはり映像にあることは否定のしようがない。若い女性がセーラー服を着て太腿もあらわに大剣で敵をなぎ倒す、といった絵面は日本のアニメやゲームではお馴染みのシーン。それを海外の旬の女優さんたちが、しっかりとトレーニングを積んだ上で徹底的にセクシーかつ華麗に披露する。
 ビジュアルも凝っていて、モノトーンチックに落とし込んだり、スローやカット割りも多用して、非常にスタイリッシュでクールに決めてみせるのである。正直、これだけのために観ても損はないぐらいだが、まあ、ここは個人的な嗜好も入ってくるので保証の限りではない(笑)。

 ちなみに、それらを演じる女優がまたいい。何でも主役のベイビードールに最初キャスティングされていたのは、エミリー・ブラウニングではなくアマンダ・サイフリッドだったそうだ。確かに小悪魔的魅力をもつアマンダも悪くはないんだけれど、最終的にはエミリー・ブラウニングで大正解だったのではないか。
 主人公ベイビードールがもつ精神の不安定さ、脆さ、危うさ、エロさといった要素はエミリー・ブラウニングならではのものだ。誤解をおそれずにいうと白痴美というやつだが、それをここまで見事に演じるエミリー・ブラウニングの力は並ではない。バトルシーンも凄いのだけれど、とりわけダンス前の恥ずかしげというかアンニュイというか、ああいう表情は決して美人タイプじゃない彼女だからこそ活きるのかもしれない。


 ザック・スナイダーが照れも恥ずかしげもなく、自分の好きなものを思い切り詰め込んだ厨二的映画という向きもあるようだが、ううむ、もともと小説や映画を含め、芸術なんてそんなものでしょ。それが生活などなどのためにいろいろとアレンジやコントロールが必要になってくるわけで。
 そもそも本作は決してそんな好き勝手に作ったバカ映画ではない。ビジュアルやバトル優先ゆえのストーリー的ツッコミどころはいくつかあるけれど、完成度は正直高い。冒頭のシーンも引きこまれるし、以後もメリハリの効いた展開が鮮やか。
 アイテム探しというストーリーを称してゲーム的という人もいるようだが、それはあたっているようで違う。アイテム探しは、神話や民話における基本的な構成要素のひとつで、ゲームなどもそれを踏襲しているに過ぎないのである。多重世界で見せ方をややこしくしている分、メインストーリーはシンプルに、という考え方もできるだろう。

 とにかく、これはやはりザック・スナイダーの魅力満載の一本。少なくとも男の子なら一度は観るべきである。

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