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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』(ハヤカワミステリ)

 ポケミスとしてはかなり珍しいことだが、なんと一般紙の書評欄で大きく採り上げられ、売れ行きも上々と聞く本がある。ローリー・リン・ドラモンドの『あなたに不利な証拠として』だ。本作は短編集なのだが構成がちょっと変わっている。いくつかの短編ごとに異なる複数の女性警官を主人公にし、各短編を連作のようにまとめているのだ。別にミステリとしての仕掛けではないのだが、これだけでもけっこう面白そうな予感がして、遅ればせながら手にとってみた。

 なるほど、これは凄い。小説というよりもノンフィクション、ドキュメンタリーのような文体で、女性警官の心理がこれでもかというぐらい細密に綴られている。
 例えば初めて人を殺した体験が及ぼす影響など、普通のミステリでもよく主人公の性格付けに用いられることがある。しかし、あくまでそれはキャラクター設定の一部であったり、まあ要は味付けレベルといったことがほとんどだ。本作ではそういうミステリでごく当たり前に描写される事実をないがしろにせず、むしろそれがメインテーマとなる。日常的な警官の業務から生まれる心の葛藤、それを徹底的に描写してゆくのである。とにかく異様な迫力があり、ここまで読み応えのある作品はそうそうないだろう。

 なお、本作は一見するとハードボイルドや警察小説とも見られるだろうが、内容的にはまったくミステリとはいえない。ハヤカワNV文庫ならともかく、ポケミスに入れるのはどうなんだろう? ちょっと理解しがたい。


Comments

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ポール・ブリッツさん

刊行当時は意外に賛否両論出たようですが、まあ普通のミステリだと思って読むとそりゃ厳しいかもですね。だってミステリじゃないし(笑)。まあ小説としては十分に力のある作品で、私は圧倒的に肯定派です。というか、もともとこういうボーダーラインの小説は好きなんですよね。ミステリのような文学、文学のようなミステリ、どっちもOKです。

Posted at 21:08 on 04 23, 2009  by sugata

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この本、読むときは没頭して読めたのですが、短編ひとつ読み終わるのにも長編小説を1冊読んだときくらいの体力を持ってかれるような気がして、読み終わった後でくたくたに疲れたのが印象に残っています。
この疲れかたには、高村薫氏の諸作や、天童荒太氏の「家族狩り」(初期版)を読んだときと同様なものがありましたなあ。
本書をミステリのような文学としたら、文学のようなミステリは笠井潔でしょうか? 比べるとしたら、わたしは後者のほうが好きなようであります(^^)

Posted at 16:42 on 04 23, 2009  by ポール・ブリッツ

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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