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 『松本清張短編全集10空白の意匠』を読む。昭和三十四年から三十六年にかけて書かれたものが中心である。まずは収録作。

「空白の意匠」
「潜在光景」
「剥製」
「駅路」
「厭戦」
「支払い過ぎた縁談」
「愛と空白の共謀」
「老春」

 松本清張短編全集10空白の意匠

 珍しいことに歴史物や社会派は少なめ。強いていえば恋愛や老いをテーマにしたものが多く、ある意味ではいつも以上に松本清張の情念が爆発しているように感じられた。以下、印象に残った作品の感想など。

 表題作でもある「空白の意匠」は地方新聞広告部長の末路を描いた、いわば企業小説。様々な軋轢のなかで苦しみもがく主人公の姿は、洒落にならないぐらいの真実味をもって迫り、権力構造や中間管理職の悲哀云々という紋切り型の表現では、なかなかこの息苦しさは伝えられない。

 続く「潜在光景」は、平凡なサラリーマンの不倫話。もちろんただの痴情のもつれといった程度で終わるはずもなく、不倫相手の子供が自分に懐かない苛立ちが徐々にクローズアップされ……だが実は、という一席。捻りも語りも一級、本書のイチ押し。

 「剥製」は人生の終焉をテーマにした作品。ぶっちゃけそれほど成功しているとは思えないアンバランスな構成だが、清張流の奇妙な味とでもいおうか。

 以上、「空白の意匠」「潜在光景」「剥製」の三作を読めるだけで十分元は取れるのだが、ちょっと面白いところでは「支払い過ぎた縁談」も挙げておきたい。著者自らO・ヘンリイを意識したという作品だが、確かに清張には珍しく、オチで読ませる。ただ、文章はいつもの清張独特のねちっこい語りなので、いうほどの爽快感はない(苦笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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