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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

フレッド・マクラウド・ウィルコックス『禁断の惑星』

 DVDで『禁断の惑星』を視聴。1956年公開のSF映画で、監督はフレッド・マクラウド・ウィルコックス。
 先日から紹介している『宇宙水爆戦』『金星人地球を征服』とはほぼ同じ時代に撮られているが、内容的には一枚も二枚も上。勝手に古典SFモンスター映画祭の第三弾とするのは少々申し訳ないぐらいの名作である。さすがにこれは管理人も過去に何度か観ております。

※今回、ネタバレ気味ですので未見の方はご注意ください。

 禁断の惑星

 時は2200年代。アダムス船長が率いる宇宙船は、十年前に消息を絶った移民団捜索のため惑星アルテア4へ着陸する。
 だが、そこで生き残っていたのはモービアス博士と、アルテアで誕生した彼の娘アルタ、そして博士が作ったロボット「ロビー」だけであった。それ以外の移民たちは正体不明の怪物に襲われて死んでしまったのだ。残ったモービアスは、かつてこの星で栄華を極めていたクレール人の設備を利用し、自身の能力を飛躍的に高めることで、快適な生活を送ることに成功した。そして怪物もなぜか以後は現れなかったのだという。
 だが、モービアスはアダムスたちがやってきたことで怪物が再び現れると予言。そしてその言葉どおり船員たちは一人ずつ怪物に殺されていく……。

 モンスターの正体、モービアスが生き残った理由、クレール人が高度な文明を持ちながら滅びた理由……、さまざまな謎と疑問が浮かび上がり、それらがモンスター襲撃によるサスペンスと平行して描かれるストーリーの巧みさがまず素晴らしい。また、謎が徐々に明らかになる過程は本格ミステリにも通ずるものがあり、しかもその謎解きとモンスター襲撃をクライマックスで同時に見せるラストも巧い。
 そして何より、その中心に、人間の潜在意識や自我を用いたことが秀逸。
 当時はその難解さから決して賛辞だけではなかったようだが、心理学や哲学をSFに落とし込んだ功績は偉大で、その後のSFの発展にも寄与したという。
 まあ、最近はそういう要素を盛り込みすぎて自爆している映画も多い気がするが、本作の頃は設定もそこまで複雑ではなく、かえって骨太な印象。むしろ今の時代こそ本作は楽しめるのではないか。SFだからとか古い映画だからとか言わず、食わず嫌いしている人にもぜひとも観てもらいたい。それぐらい見事。

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Comments
 
松長良樹さん

『宇宙家族ロビンソン』、懐かしいですね。私も深夜テレビでけっこう観ました。
フライデーは当然、ロビーの影響大というか、ほとんどパクリに近いかも(笑)。でもあれはあれでいい味出してましたよね。お終いの方では人間と友情すら芽生えてたような記憶があります。

機会があれば『禁断の惑星』もぜひあらためて観てあげてください。今でも十分面白いですよ。
 
こんばんわ。 ロビーは本当に魅力のあるロボットです。

昔スターログという雑誌があり、その表紙を飾ったロビー

のイラストは実に見事でした。

たしか宇宙家族ロビンソンにフライディというロボットもい

ましたが、それの原型みたいな気もします。

テレビでこの映画を見た記憶もありますが、もう一度

じっくりみたくなりました。
 
杣人さん

ロビーのおもちゃ、ありましたねえ。
思えば『スターウォーズ』のR2D2とか『宇宙戦艦ヤマト』のアナライザーとか、ロボットのマスコットという存在は、この映画が先駆けですものね。ロビーの果たした役割は実に偉大であります。
 名作ですね。
お待ちしていました『禁断の惑星』。
私も小学生の時に観て人類の将来、精神の進化など色々考えさせたられ映画です。持ってはいませんでしたがロビーのブリキのおもちゃも有ったと記憶しています。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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