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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

『刑事コロンボ/策謀の結末』

 『刑事コロンボ/策謀の結末』をDVDで視聴。通算四十五作目、旧シリーズとしては最終作にあたるが、それだけに力の入った印象的な作品に仕上がっている。

 アイルランド出身の詩人、ジョー・デブリン。北アイルランド援護協会に属し、アイルランドの平和に貢献をしていた彼だったが、それは表の姿。実は協会の会長と共にテロ組織IRAに所属し、武器の密輸に暗躍していたのである。
 そんなある日、ジョーは銃の仲買人ポーリーが資金の持ち逃げを画策していることに気づき、銃で彼を処刑する。証拠となる書類もすべて持ちだし、自ら銃の取引に乗り出すが……。

 ジョー・デブリンのキャラクターがとにかく見事である。基本的には組織的暴力に絡む根っからの犯罪者なのだが、明朗で人なつっこいところ、主義主張のためには手段を選ばない非情なところなどが入り交じった複雑な性格であり、非常に魅力的だ。コロンボとのやりとりも敵対するというのではなく、あくまで競い合うというイメージで、そこが観る者の共感を誘う。
 ミステリとしては、現場に転がったボトルの意味や密輸の仕掛けなどがめぼしいポイント。ただ、これらはストーリー上では決定的な役目を担っているものの、印象としてはデブリンを追い詰めるためのエピソード程度にしか思えないのが残念。
 とはいえ、コロンボとデブリンの対決や、最後の「ここまで、ここを過ぎず」という名セリフも含め、とにかく魅力は満載。見事に掉尾を飾った一本といえるだろう。

 さ、あとは新シリーズもすべて収録されている『コンプリートブルーレイBOX』に買い換えるかどうかだが(苦笑)。悩ましいのう。

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Comments
 
杣人さん

洋画を観るときは絶対に字幕派なんですが、外国テレビドラマは長年の刷り込みもあってか、吹き替えの方がしっくりくるから不思議ですね。『モンティ・パイソン』なんかも圧倒的に吹き替えの方が好きです。

それにしてもピーター・フォークの訃報はつくづく残念でした。若い頃は「ヒッチコック劇場」や「ミステリー・ゾーン」なんかにも顔を出していたそうですが、こちらも観てみたいものです。
 
私の持っているのはBS放送の録画です。翻訳・吹き替えも作品の重要な要素ですからNHK、民放、DVDと色々な版があると比べてみたくなる気もしますね。
俳優個人の話題や制作秘話などには疎いのですが、それでも、ピーター・フォークは「名探偵登場」などでも記憶に残る俳優。晩年アルツハイマーを患ったことなど残念に思います。
また、素敵な話題をお知らせください。
 
杣人さん

おお、小池朝雄バージョンを持ってらっしゃるとはいいですね。先日に放映されたBSの録画、それとももしかしてオリジナルでしょうか?
私は石田版で観たのですが、こればかりは気にするなといっても気になるんですよね。
 
今晩は。
sugata様の記事にひかれ久しぶりに「策謀の結末」を観ました。ウイスキーボトルの使い方に思わず判った!と言ってしまいましたが、確かにジョー・デブリン役のクライヴ・レヴィルはいい演技ですね。追い込まれてゆく感じがあれば緊迫感もあったでしょうが、見せるポイントが違うのでしょう。
小池朝雄さんの吹き替えも楽しめました。
いつも有難うございます。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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