- Date: Sun 21 05 2006
- Category: 国内作家 谷崎潤一郎
- Community: テーマ "文学" ジャンル "本・雑誌"
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谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』(中公文庫)
何となく発作的に谷崎潤一郎が読みたくなって、中公文庫の『人魚の嘆き・魔術師』を読んでみる。
初期の幻想的な短めの中編を二つまとめた作品集だ。どちらもとりたてて難解なテーマがあるようには思えず、これは素直に美に執着する人間を描いたものと解釈すればよいのだろう。とはいえなにせ人魚と魔術師である。普通の「美」と一線を画すことは当然だが、意外と大きく踏み外すこともないのが谷崎潤一郎ならでは。例えば人魚を人魚として愛するのではなく、あくまで白人崇拝の延長としての人魚だったりする。谷崎が当時感覚としてもっていた「美」の基準が、何となく感じられて興味深い。耽美だけれどドロドロではないのだ。むしろ谷崎の作品を愛した乱歩や正史の方にこそ、そのエッセンスはより強烈に感じられる。
ちなみにこの二中編が書かれた同じ年、同じ月に佐藤春夫の「西班牙犬の家」も書かれている。この頃、既に谷崎潤一郎は佐藤春夫に一目置いていたらしく、立て続けに両者の幻想小説が書かれたのも、何やら因縁めいていて楽しいではないか。
初期の幻想的な短めの中編を二つまとめた作品集だ。どちらもとりたてて難解なテーマがあるようには思えず、これは素直に美に執着する人間を描いたものと解釈すればよいのだろう。とはいえなにせ人魚と魔術師である。普通の「美」と一線を画すことは当然だが、意外と大きく踏み外すこともないのが谷崎潤一郎ならでは。例えば人魚を人魚として愛するのではなく、あくまで白人崇拝の延長としての人魚だったりする。谷崎が当時感覚としてもっていた「美」の基準が、何となく感じられて興味深い。耽美だけれどドロドロではないのだ。むしろ谷崎の作品を愛した乱歩や正史の方にこそ、そのエッセンスはより強烈に感じられる。
ちなみにこの二中編が書かれた同じ年、同じ月に佐藤春夫の「西班牙犬の家」も書かれている。この頃、既に谷崎潤一郎は佐藤春夫に一目置いていたらしく、立て続けに両者の幻想小説が書かれたのも、何やら因縁めいていて楽しいではないか。
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