fc2ブログ

探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

マイクル・コナリー『真鍮の評決(上)』(講談社文庫)

 待ってましたのコナリー新作、『真鍮の評決』をとりあえず上巻まで読了。

 本作は『リンカーン弁護士』で颯爽?とデビューしたミッキー・ハラーを主人公としたシリーズ第二作。しかもボッシュとの競演というのだから、これはもうファン必読である。

 真鍮の評決(上)

 前作で重傷を負った弁護士ミッキー・ハラーは丸一年間というもの法廷から遠ざかっていた。その彼にロサンジェルス郡上級裁判所の判事から呼び出しがかかる。ハラーと互いに代理契約を定めていた弁護士ジェリー・ヴィンセントが殺されたため、彼の扱っていた案件を引き受けられるかどうかの打診であった。なかにはハリウッドの映画制作会社社長の依頼もあり、莫大な弁護料も期待できる。復帰としては最高のスタート、そう考えたハラーはヴィンセントの案件を請け負うが、その途端、周囲にきな臭い動きが……。

 プロローグ的に入っている第一部でいきなり引きこまれる。ハラーとヴィンセントの関係性を示すエピソードなのだが、これだけで既に短篇の味わい。
 また、ボッシュとミッキーの出会いのシーンも実にいい。小説にしかできない演出で、上巻で一番ゾクッときたシーンである。

 ただ、その他は全般的に静かな出だしだ。事件にはそれほど動きがなく、ボッシュとハラーも思ったほどには絡まない。いつもより気持ちスロースタートっぽい印象である。まあ、コナリーだから下手なことをするはずもないのはわかっているが、ちょっと不安(苦笑)。この物語を果たしてどのようにうねらせてくれるのか、下巻ではその辺りにも注目である。

関連記事

Comments

Body
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー