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ニコラス・ブレイク『ワンダーランドの悪意』(論創海外ミステリ)
ニコラス・ブレイクの『ワンダーランドの悪意』を読む。『不思議の国のアリス』をモチーフにした本格ミステリで、何となくだがエイプリルフールにはちょうどいい読み物だったかもしれない。
こんな話。〈ワンダーランド〉と名付けられた休暇用キャンプ。人々が仕事の疲れをほぐし、束の間の休息を楽しむこの場所で、事件は起きた。海で泳ぐ人の足を引っ張ったり、テニスボールに糖蜜をかけたり、ベッドに動物の死骸が置かれたり。しかも犯人は自らを「マッド・ハッター」と名乗る。〈ワンダーランド〉は文字どおり「不思議の国のアリス」の世界にたたき込まれたのだ。
エスカレートするいたずら事件に関係者は頭を抱えるが、会社の評判を考えると表沙汰にはしたくない。そこで白羽の矢が立ったのが、私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズであった……。

『不思議の国のアリス』が題材ということで、もっとバカ騒ぎ的なものを期待していたが、さすがはニコラス・ブレイクというべきか。シュールな展開にもっていくことはせず、キャンプの運営サイドがトラブルにどう対処していくかという展開で見せていく。もちろんそれだけでは退屈になるだろうから、そこへ宿泊客やキャンプ関係者のラブコメなどを絡めていくという寸法。
ただ、構成はともかく、残念ながら弾け方が少々物足りない。そもそもネタがネタだから、いつものブレイクの格調高さは犠牲にしているわけで、だからこそ逆にアリスの世界にあるような奔放さを期待したいのである。それが全然足りない。全体的にサクッと読める手軽さはあるが、ううむ、ブレイクであればもう少しハードルは高くしたいところだ。
そうなると期待したいのが、謎解きやトリックなど、本格ミステリとしての部分ということになるが、こちらも本作に関してはやや低調。まあ大きな事件が起きない話なので、サプライズも含めどうしてもこじんまりしてしまうのは致し方ないところではあるが。ううむ、それにしても。
結論としては、読んでいる間はそれなりに楽しいけれど、ブレイクの良さはあまり感じられない作品。比較的、初期の作品なので、作風や方向性をまだまだ模索中であったと解釈するべきか。
個人的には、ニコラス・ブレイクが『不思議の国のアリス』をネタにして一本書いたと、いう事実だけでOKなのではあるが(苦笑)。
こんな話。〈ワンダーランド〉と名付けられた休暇用キャンプ。人々が仕事の疲れをほぐし、束の間の休息を楽しむこの場所で、事件は起きた。海で泳ぐ人の足を引っ張ったり、テニスボールに糖蜜をかけたり、ベッドに動物の死骸が置かれたり。しかも犯人は自らを「マッド・ハッター」と名乗る。〈ワンダーランド〉は文字どおり「不思議の国のアリス」の世界にたたき込まれたのだ。
エスカレートするいたずら事件に関係者は頭を抱えるが、会社の評判を考えると表沙汰にはしたくない。そこで白羽の矢が立ったのが、私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズであった……。

『不思議の国のアリス』が題材ということで、もっとバカ騒ぎ的なものを期待していたが、さすがはニコラス・ブレイクというべきか。シュールな展開にもっていくことはせず、キャンプの運営サイドがトラブルにどう対処していくかという展開で見せていく。もちろんそれだけでは退屈になるだろうから、そこへ宿泊客やキャンプ関係者のラブコメなどを絡めていくという寸法。
ただ、構成はともかく、残念ながら弾け方が少々物足りない。そもそもネタがネタだから、いつものブレイクの格調高さは犠牲にしているわけで、だからこそ逆にアリスの世界にあるような奔放さを期待したいのである。それが全然足りない。全体的にサクッと読める手軽さはあるが、ううむ、ブレイクであればもう少しハードルは高くしたいところだ。
そうなると期待したいのが、謎解きやトリックなど、本格ミステリとしての部分ということになるが、こちらも本作に関してはやや低調。まあ大きな事件が起きない話なので、サプライズも含めどうしてもこじんまりしてしまうのは致し方ないところではあるが。ううむ、それにしても。
結論としては、読んでいる間はそれなりに楽しいけれど、ブレイクの良さはあまり感じられない作品。比較的、初期の作品なので、作風や方向性をまだまだ模索中であったと解釈するべきか。
個人的には、ニコラス・ブレイクが『不思議の国のアリス』をネタにして一本書いたと、いう事実だけでOKなのではあるが(苦笑)。
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