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 先頃、無事に完結した「東宝特撮映画DVDコレクション」全六十五巻だが、観る方はそんな簡単にはいかないわけで、本日もなんとか一本消化。
 ものは山本迪夫監督の『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』。公開は1970年。
 本作は七十年代に制作された「血を吸う」シリーズの第一作。吸血鬼を題材にした、東宝特撮映画の中でも屈指の異色シリーズだ。当時はそれなりにヒットしているが、いかんせん所詮は徹底したB級テイスト。いまでは知る人ぞ知るシリーズとなってしまったが、これがまた悪くないのである。

 雷雨の夜、婚約者の夕子を訪ね、蓼科の山中にある生家を訪れた和彦。そこには夕子の母親とその下僕が二人きりで暮らすばかり。なんと夕子は半月ほど前に交通事故で亡くなったというのだ。ところが和彦はその夜、泊まった屋敷の窓から死んだはずの夕子を目撃し……。
 一方、なかなか帰京しない和彦を心配する妹の圭子。彼女は恋人の高木浩を誘って屋敷を訪れるが、夕子の母から聞かされたのは、和彦が既に帰ったという話。しかし和彦のカフスボタンを発見した二人は、車の故障を口実に屋敷に泊めてもらい、密かに調査を開始しようとする……。

 血を吸う人形

 人里離れた山中の洋館を舞台に繰り広げられるゴシック・ホラー。
 設定そのものは海外ホラーからいろいろと拝借している感じ。ただ、それらを海外ホラーのごとくたたみかけるように見せるのではなく、国産の怪談の手法とミックスして見せているのが印象的だ。
 例えば、まずはショッカー的な仕掛けで登場人物の男(もちろん観客もいっしょに)をドッキリさせる。その男が慌てて逃げ出し、ようやく立ち止まって肩で息を切らせている……ここで一瞬の間があり、何気なく横を見やると……などという演出はわかっちゃいるが怖いわけである。そんなに斬新な手ではないけれど組み合わせが巧い。今できることを最高の状態でやってみましたという感じか。

 キャストもいい。導入から中村敦夫だし、それを受ける南風洋子に高品格、一応は主人公にあたる二人には松尾嘉代に中尾彬という布陣。現在からすると濃すぎるほどのメンバーだが、当時はさすがにそれほどではなく、適度なアクの強さが心地よい。
 そして何といってもヒロイン夕子を演じる小林夕岐子の存在感。この女優さん、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』では原住民のお姉ちゃんを演じたり、『ウルトラセブン』ではアンドロイド少女を演じたりと、東宝特撮系ではけっこう特殊な役柄が多い人なんだが、本作においては決定的なハマリ役。役柄上ほぼセリフもないが、その微笑や憂いを含んだ透明感溢れる表情が絶品である。薄幸の美少女の、まさに典型。これがもう一方のヒロイン松尾嘉代と役柄が逆だったら、ここまでの作品にはならなかっただろう(笑)。

 けっこう褒めてはいるが、もちろん欠点もいろいろある。なんたってB級ですから。
 決定的なのはヒロイン夕子の秘密で、これがけっこう胡散臭い理屈で押し通してしまうのがなんとも(苦笑)。それに絡んでラストもなんでこうなるの?という疑問は否めない、というか夕子の言動(いや”言”はないか)に意外と一本筋が通っていない嫌いがある。ううむ。
 でもいいのである。本作は演出やキャストの熱演をこそ味わい、ゾクッとくればいい映画なのだから。

 最後に蛇の足。
 吸血鬼が題材のシリーズといいながら、本作に関してはまったく吸血鬼は関係ない。単なる比喩的な意味合いに留まる。
 上で腐したメインのネタだが、実はポーの「ヴァルドマアル氏の病症の真相」が元ネタらしい。まじか。





ロッカリアさん

「血を吸う」シリーズはあと二本残ってますし、ゴジラはデストロイア以降まるまる、あとは『ミカドロイド』とか『怪談』、『大冒険』と先は長いです。そのあとは007全作も計画中なんですが(笑)。
それはともかく、確かにこの映画、作りが丁寧です。変にバタバタせず、落ち着いた日本流ゴシックホラーに仕上がっていますよね。納得の一本です。

『アンドロギュノスの裔』は楽しんでいただけたようで何よりです。夜寝る前に短篇を少しずつ、というのは、この本の最高に贅沢な読み方じゃないでしょうか。
【2012/04/18 23:06】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんばんは。
やっと見られましたか~、大変ですね。
子供の時に見た印象とかなり違いましたが、これはこれで面白かったです。
最近古い映画にハマっていますが、このシリーズはかなり丁寧に作られているので、そんなぁ~、と突っ込みながらも最後まで楽しく見れます。

surataさんに教えてもらった「アンドロギュヌスの裔」は面白かったです。
特に「夏の物語」は、この時代に映画の中に入り込む、と言う想像力があったのかと、ただただ驚くばかりでした。
短編が多かったので、最高のベッドタイム・ストーリーとして楽しめました。
【2012/04/18 22:33】 URL | ロッカリア #-[ 編集]

空犬さん

少し調べてみたんですが、小林夕岐子は「太陽にほえろ」にも出ているんですね。しかものっけからボスを拳銃で襲うという役w いろいろとすごい役者さんです。

あ、本の雑誌、買いましたよ。すごいですね。私も図鑑は好きなほうですが、あれも集め出すと冥府魔道に落ちそうな気がするんで自粛しております。
【2012/04/18 00:28】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

本作の小林夕岐子はすごいですね。
ものすごく印象に残ります。
個人的には、「アンドロイド0指令」も
大好きだったりしますw。
【2012/04/17 23:32】 URL | 空犬 #-[ 編集]















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