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 パトリック・クェンティンの『迷走パズル』を読む。かの〈別冊宝石〉で『癲狂院殺人事件』として訳されて以来、およそ五十年ぶりに新訳された作品。演劇プロデューサー、ピーター・ダルース・シリーズの第一作目でもある。

 妻を亡くしたことから酒浸りになった演劇プロデューサーのピーター・ダルース。とうとうアルコール中毒で入院治療を受ける羽目になっていた。そんなある日のこと、ピーターは「ここから逃げろ、殺人が起こる」という声を聞き、パニックに陥る。療養所の所長に相談したピーターだが、逆に病院内で最近頻発する変事について、調査してもらえないかと依頼を受ける。社会復帰に向けての治療の一環としても効果的だというのだ。
 調査に乗り出したピーターは、やがて奇怪な状況で変死している介護士を発見するが、病院側は事故死だととりあわない。そんななか第二の事件が発生。しかもあろうことか、容疑者はピーターが恋に落ちた同じ入院患者の女性だった……。

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 ピーター・ダルースものの一作目とはいうものの、通算では七作目にあたるこの作品。これ以前の作品で訳されているものとしては『死を招く航海』、『グリンドルの悪夢』があるけれど、個人的にはどちらもいまいち。中期から後期にかけての作品の方が安定している感もあって、比較的初期のこの作品もやや心配だったが、まったくの杞憂でありました。

 舞台が精神病院、主人公が入院中のアル中演劇プロデューサーという、狙っているにしても相当チャレンジャーなこの設定にまず拍手。心の病各種を備えた入院患者たちだけでもヤバイのに、患者たちに愛想を振りまきすぎる看護師や元レスラーの介護士など、病院側のスタッフもひと癖ふた癖ありそうな者ばかり。
 そんな彼らに襲いかかる不吉の前兆。だが、それは君の気のせいだ、なんせ君は心の病気なんだから。そんな論理がまかり通ってしまうこの世界で、ダルースは悪戦苦闘する。そう、愛する者のために。
 とにかく登場人物たちのドタバタが普通ではないから、可笑しいんだけれど笑うに笑えない展開の連続(いや、真面目に考えるとけっこうダークなんだけどね)。途中で、ああ、これはクェンティン流『不思議の国のアリス』なのかなぁとも思った次第である。

 しかも、そんな状況のなかできっちり伏線を忍ばせ、ラストでは論理的に犯人を指摘していくところなど、それまでの展開と非常に対比が効いていて鮮やかである。おまけにどんでん返しがまたお見事。物語だけでもなく謎解きだけでもなく、双方が互いに奉仕しあって、非常に気の利いた作品といえるだろう。
 ダルースとアイリスの出会いを描いたという点も踏まえ、これは忘れられない作品になりそうだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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