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 現代的社会派の衣をまといつつ本格ミステリの香りも漂わせた『ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女』から一転、アクションとサスペンスを全面に押し出し、警察小説の味わいも備えた『ミレニアム2火と戯れる女』。まずはたっぷりと堪能させていただきました。

 ミレニアム2火と戯れる女(下)

 ミカエルとリスベットのダブル主人公、いや7対3でミカエルの物語といってもよかった前作だが、本作は圧倒的にリスベットのための物語である。
 優れた情報収集能力と映像記憶能力を持つ天才的ハッカー。そればかりか数学においても非凡な才能を有し、おまけに格闘術やドライブテクニックにも長ける。だが感情表現やコミュニケーションについては極度に苦手で人との交わりを嫌う。それがリスベット・サランデル。
 このとてつもないスーパーウーマンぶりによって、逆に感情移入できないとか現実離れしすぎているといった批判があるのはわかる。本作でもハッカーの能力が活かされすぎて、御都合主義的に進むところも少なくないのだ。
 だが、社会問題を扱ったり、語り口がリアルなだけに勘違いしやすいのだが、このシリーズはもともと虚構性が強く、ケレンたっぷりの物語なのである。何よりもまずエンターテインメントなのだ。巨悪を炙り出すシステムとして、リスベットは必要欠くべからざる存在であり、彼女の強い個性なくしては物語を淀みなく(しかも魅力的に)流すことは難しかったのではないだろうか。スーパーウーマン、けっこうではありませんか。

 とはいえ、本作がケレンだらけの爽快感溢れる物語なのかというと、決してそんなことはない。それらもひとつの魅力ではあるけれど、本作における最大の謎はリスベットの過去である。人間としての彼女に迫ることこそが最大の読みどころなのだ。
 ただし、真実は苦い。あまりに苦い。感情移入こそできないかもしれないが、我々はリスベットの体験を通して、人間の業の忌まわしさを受け止め、そして結局はスウェーデンの抱える問題について考えざるを得ない。社会から個へ、個から社会へ。

 少し注文をつけておくと、中盤では警察、ミカエル、アルマンスキーの三竦みでリスベットを追う展開になるのだが、この捜査競争が軸になるのかと思いきや、それほど大した流れにならないのは物足りなかった。結局はいつでもリスベットが先を行くというパターンで、警察が無能扱いにされるのはともかく(苦笑)、三竦みによるドキドキハラハラ感にはもっとスポットを当てても良かったのではと思う次第。

 ラストはあっけないというか、いささか唐突に幕を下ろす。解説によるとどうやらこのまま『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士』になだれ込むようなので、次は他の本を間に挟むことなく、一気に取りかかったほうがよさそうだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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