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 DVDで1964年公開の映画『怪談』を観る。小泉八雲の原作に材をとったオムニバス映画で、「黒髪」「雪女」「耳無し芳一の話」「茶碗の中」の四話を収録。監督は巨匠、小林正樹。キャストに三国連太郎、新珠三千代、仲代達矢、岸恵子、中村賀津雄、丹波哲郎、仲谷昇等々の布陣を擁した大作で、カンヌ国際映画祭審査員特別賞を授賞し、アカデミー外国映画賞にもノミネートされた作品。なお、これも歴とした東宝特撮映画DVDコレクションの一本である。

「黒髪」
 貧乏に疲れ、妻を捨てて遠い任地へ向った武士がいた。彼はそこで裕福な家柄の妻を娶るが、その性格は我侭で冷酷であった。男は今更のように別れた妻を慕い、ついにある夜、荒溌するわが家に帰りつく。男は妻と再会し、今迄の自分をわび、一夜を共にした。だが、夜が明けたとき男を待っていたものは……。

「雪女」
母親と暮らす若い樵夫の巳之吉は、茂作老人と森へ薪をとりに入ったが、吹雪のため山小屋に閉じこめられる。その夜のこと、二人の前に雪女が現れ、老人は白い息を吹きかけられて殺されてしまう。しかし巳之吉は、今夜のことを誰にも話さないという条件で命を助けてもらうのであった。なんとか村へ帰った巳之吉は、その後、森で出会った美しい娘を妻に迎え、仕合せな日々を過していたが……。

「耳無し芳一の話」
 僧の芳一は琵琶の達人であった。そんな彼の元へ、さる高貴なお方の遣いと名乗る男が現れ、毎夜のように芳一は連れ出されて琵琶を弾じることになる。だが、不審に思った同輩が後をつけると、芳一が弾じていたのは平家一門の墓前であった。彼は平家の怨霊に憑かれていたのだ。住職は抱一の生命を案じ、抱一の身体中に経文を書き、怨霊が迎えに来ても声を出さないよう告げるのだが……。

「茶碗の中」
 中川佐渡守の家臣、関内は、茶店で出された茶碗の中に不気味な男の顔を目にする。茶碗を何度とりかえても顔は消えず、関内は結局それを飲みほして帰っていく。やがて屋敷に帰った関内を、見知らぬ侍が訪ねてきた。その男こそ、茶碗の底に映った不気味な顔の持ち主であった。問答のすえ、遂に関内は男を斬ったのだが……。

 怪談

 原作ではどれも数ページ(だったような)の短い話なのだが、それを各話だいたい50分程度をかけてゆったりと語るように見せる。
 とにかく映像のインパクトが強くて、一見すると何らかのメッセージや象徴性を持たせているようにも思えるのだが、たぶんそれほど意味はない(笑)。普通は美術や音楽がストーリーに貢献するが、この映画では逆にストーリーや演出が、美術と音楽に奉仕すると言ってもよいのではないだろうか。それぐらい存在感があるのだ。
 「怪談」だからといって特に怖くするでなく、文芸作品だからといって深い話にするでもなく、それぞれのストーリーが持つイメージを独特の美術と音楽で再現してみせる、アートのような映画といってもよいだろう。
 なかでも「雪女」は、一貫したブルーのイメージといい、アバンギャルドな背景といい、すさまじくシュール。岸恵子の妖艶な演技も相まって本作中のイチ押しである。

 トータル三時間という長丁場ゆえ、いわゆるエンターテインメント性だけを求めるとあては外れるけれど、気忙しい日常を忘れるにはいい映画といえる。全面的におすすめはしないが、個人的には納得の一本。




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