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山田風太郎『山田風太郎少年小説コレクション1 夜行珠の怪盗』(論創社)
考えるとこの一ヶ月、ずっとリスベットやミカエルの話ばかりを読んでいたわけで、まあ、面白いからいいんだけれど、正直ちょっとスウェーデン人たちの活躍にも飽きてきた(苦笑)。そろそろ真逆の話も読んでみたいということで、本日の読了本は『山田風太郎少年小説コレクション1 夜光珠の怪盗』。

かつて本の雑誌社から「都筑道夫少年小説コレクション」というシリーズが出ていたのだが、実はあのシリーズのあとには他の作家のジュヴナイルも予定されていたのだという。だが、悲しいかな採算が合わずにシリーズは都筑道夫のみで終了。編者の日下三蔵氏があたためていた企画はいったん消滅したのだが、捨てる神あれば拾う神あり。あらためて論創社で続きを出すことになったのが、この「山田風太郎少年小説コレクション」らしい。
装丁もあえて「都筑道夫少年小説コレクション」にあわせ、加えて当時の挿絵をふんだんに盛り込んだ「山田風太郎少年小説コレクション」は、もう出してくれただけで涙ものの一冊なのだが、なんとこの後には、さらに鮎川哲也、仁木悦子、高木彬光なども予定されているというから凄い。いや、ほんとに凄い。
とはいえ、それらが出るかどうかは、まずこの山田風太郎の売れ行きにかかっているというから、予断はまったく許さない状況である。興味のある方はぜひとも本書を買って頂き、このシリーズの未来を支えていこうではありませんか。っていうか支えて下さい。
とまあ、版元へのサービスはこのくらいにして、一応、感想も(笑)。まずは収録作。
「黄金密使」
「軟骨人間」
「古墳怪盗団」
「空を飛ぶ悪魔」
「天使の復讐」
「さばくのひみつ」
「窓の紅文字」
「緑の髑髏紳士」
「夜光珠の怪盗」
「ねむり人形座」
いやあ、予想どおり楽しいわ。
戦前の少年向け探偵小説もその時代なりの魅力があって楽しいのだが、戦後のものはやはりレベルが高いというか、けっこうきちんとした探偵小説になっているのがいい。これで少年小説らしい破天荒さが影を潜めては意味が無いのだが(あくまで私見ですが)、こと「破天荒」なことにかけては右にでる者のない山田風太郎である。トンデモな部分と探偵小説のバランスがよくて、それも含めて納得の一冊なのである。
まあ、正直言うとバランスの悪い作品やバカらしい作品もあって(笑)、やはり「軟骨人間」や「古墳怪盗団」、「空を飛ぶ悪魔」のようなあまりにボリュームの小さい作品は少々苦しい。まあ、そんな作品に限って茨木歓喜シリーズだったりするから、なかなか油断はできないんだけど。
マイ・フェイヴァリットは「黄金密使」と「夜光珠の怪盗」のツートップ。
「黄金密使」はこの限られた登場人物で、よくもまあ、これだけ重ねてくるなぁと感心することしきり。「ああ、このネタだよね」というこちらの予想の見事に上をいく。
一方の「夜光珠の怪盗」は正統派少年冒険小説といった趣で、脱獄トリックや意外な犯人など見どころ多し。特に脱獄トリックは、思考機械のパクリとか思っていると、プラスαでけっこう無茶をやっているのが笑えた。さすが山風である。
とにかくシリーズの今後のためにも、興味のある方はぜひともご購入を。こんなに面白いシリーズを二冊や三冊で終わらせてはだめだって。

かつて本の雑誌社から「都筑道夫少年小説コレクション」というシリーズが出ていたのだが、実はあのシリーズのあとには他の作家のジュヴナイルも予定されていたのだという。だが、悲しいかな採算が合わずにシリーズは都筑道夫のみで終了。編者の日下三蔵氏があたためていた企画はいったん消滅したのだが、捨てる神あれば拾う神あり。あらためて論創社で続きを出すことになったのが、この「山田風太郎少年小説コレクション」らしい。
装丁もあえて「都筑道夫少年小説コレクション」にあわせ、加えて当時の挿絵をふんだんに盛り込んだ「山田風太郎少年小説コレクション」は、もう出してくれただけで涙ものの一冊なのだが、なんとこの後には、さらに鮎川哲也、仁木悦子、高木彬光なども予定されているというから凄い。いや、ほんとに凄い。
とはいえ、それらが出るかどうかは、まずこの山田風太郎の売れ行きにかかっているというから、予断はまったく許さない状況である。興味のある方はぜひとも本書を買って頂き、このシリーズの未来を支えていこうではありませんか。っていうか支えて下さい。
とまあ、版元へのサービスはこのくらいにして、一応、感想も(笑)。まずは収録作。
「黄金密使」
「軟骨人間」
「古墳怪盗団」
「空を飛ぶ悪魔」
「天使の復讐」
「さばくのひみつ」
「窓の紅文字」
「緑の髑髏紳士」
「夜光珠の怪盗」
「ねむり人形座」
いやあ、予想どおり楽しいわ。
戦前の少年向け探偵小説もその時代なりの魅力があって楽しいのだが、戦後のものはやはりレベルが高いというか、けっこうきちんとした探偵小説になっているのがいい。これで少年小説らしい破天荒さが影を潜めては意味が無いのだが(あくまで私見ですが)、こと「破天荒」なことにかけては右にでる者のない山田風太郎である。トンデモな部分と探偵小説のバランスがよくて、それも含めて納得の一冊なのである。
まあ、正直言うとバランスの悪い作品やバカらしい作品もあって(笑)、やはり「軟骨人間」や「古墳怪盗団」、「空を飛ぶ悪魔」のようなあまりにボリュームの小さい作品は少々苦しい。まあ、そんな作品に限って茨木歓喜シリーズだったりするから、なかなか油断はできないんだけど。
マイ・フェイヴァリットは「黄金密使」と「夜光珠の怪盗」のツートップ。
「黄金密使」はこの限られた登場人物で、よくもまあ、これだけ重ねてくるなぁと感心することしきり。「ああ、このネタだよね」というこちらの予想の見事に上をいく。
一方の「夜光珠の怪盗」は正統派少年冒険小説といった趣で、脱獄トリックや意外な犯人など見どころ多し。特に脱獄トリックは、思考機械のパクリとか思っていると、プラスαでけっこう無茶をやっているのが笑えた。さすが山風である。
とにかくシリーズの今後のためにも、興味のある方はぜひともご購入を。こんなに面白いシリーズを二冊や三冊で終わらせてはだめだって。
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Comments
Edit
購入しましたけれど、ジュブナイルはどうしても後回しになってしまいます。が、読みたくなってしまいました。
おすすめ上手ですね。
Posted at 16:58 on 07 21, 2012 by M・ケイゾー
M・ケイゾーさん
>購入しましたけれど、ジュブナイルはどうしても後回しになってしまいます。
まったく読み急ぐ必要はありませんものね。ただ、ジュヴナイルを積んでしまうと、本当にそのままになってしまいませんか(笑)。
ちなみに子供向きだからといって変に遠慮したりルール付けしたりするのではなく、子供向けだからこそより想像力を広げられると。そういうふうに感じられるジュヴナイルが好きです。山風なんてほんと遠慮無しですから(苦笑)。
Posted at 17:50 on 07 21, 2012 by sugata