ADMIN TITLE LIST
 ちょっと仕事のバタバタとオリンピックで滞っていた読書も少しずつ上向きに。本日の読了本は論創海外ミステリからルーパート・ペニーの『警官の証言』。

 雑誌の副編集長アントニー・パードンは、知人のアデア少佐の屋敷に滞在していた。その目的はなんと宝探し。アデア少佐は競売会で競り落とした一冊の古書から、ある屋敷に財宝が隠されていることを知り、その屋敷を買い取って財宝を探し出すことにしたのだ。宝探しのメンバーが集められ、やがて財宝の一部と思われるルビーが発見されたが、まもなく少佐が密室で殺害された……。

 警官の証言

 著者のルーパート・ペニーはほとんど日本で知られていない作家だろう。以前、国書刊行会から世界探偵小説全集の一冊として『甘い毒』が刊行されたが、刊行されたことは話題になっても内容自体はそれほど評判にならなかったと記憶する。
 『甘い毒』もそうだったが、本書の特徴も——つまりはルーパート・ペニーの作風と言うことになるのだろうが——論理性へのこだわりだろう。基本的に関係者への聞き込みや捜査陣の推理や議論で物語が進み、<読者への挑戦>や手がかりの一覧など、実に本格愛に満ちあふれた内容。この徹底した論理への傾倒が、ガチガチの本格好きには堪えられないのだろうが、ストーリー的には地味すぎて、もう少し動きやサプライズはあってもいいだろう。それが『甘い毒』の評価にはともかく話題性には少なからず影響したはずである。
 ただ、著者もそういう自作の長所短所は自覚していたのかだろう。本作でも事件は非常に地味ながら、密室や暗号といった魅力的要素は盛り込んでいるし、物語の一部と二部で語り手を交代させ、それが密室トリックにもつながる技を披露するところなどはさすがである。練りに練った、というのはこういうのを言うのだろう。
 そこはかとないユーモアも味つけになっており、全体的には上質なミステリである。

 欲をいえば、上でも書いたが事件自体の魅力であったり、物語の動きであったり、もう少し読ませる工夫は欲しかったところだ。探偵役ピール主任警部の個性も弱く、全体的に真面目すぎるか。
 例えばカーのようなアクの強さ、バークリーのような意地の悪さがあればなお良かったし、もっと翻訳が進んでいたのではなかろうか。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





ポール・ブリッツさん

あー、ロラックも確かに地味でしたねぇ。いま思うと国書の世界探偵小説全集はケレン味のない作品が多いのが、ひとつの特徴でした(笑)。
ただ、ロラックは地味ながらもう少し小説的な面白さがあったように思いますね。本格度ではルーパート・ペニーの方が上のような気がしますが。どっちもどっちかな(苦笑)。
【2012/08/14 00:17】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

ペニーのこの小説は、「甘い毒」の解説を読んでいたので、ものすごく期待して読みました。

……ロラック同様、「ひたすら地味な話だった」という記憶しかありません。(^_^;)

そこらへんに、英米本格の悲劇があったのじゃないかなあ。と思う今日この頃。
【2012/08/13 08:26】 URL | ポール・ブリッツ #-[ 編集]















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説