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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

手塚昌明『ゴジラ×メカゴジラ』

 東宝特撮映画DVDコレクションもいよいよ佳境である。本日は2002年に公開された手塚昌明監督による『ゴジラ×メカゴジラ』を視聴。ゴジラシリーズとしては二十六作目、ミレニアムゴジラシリーズとしては四作目にあたる。

 1999年、台風と共に上陸した巨大生物。それは1954年に日本を襲ったゴジラと同種の生物と確認された。対特殊生物自衛隊=通称「特生自衛隊」はゴジラを迎撃するもまったく勝ち目はなく、その最中に家城茜隊員はメーサー殺獣光線車を仲間の車両に激突させ、結果的に命を奪ってしまう。やがてゴジラは去ったが、家城茜は責任を問われて資料課へ転属となる。
 一方、政府は館山沖から初代ゴジラの骨を引き上げることに成功、その骨格をもとに四年の月日をかけ、機龍=メカゴジラを完成させた。資料課へ転属しながらもトレーニングを欠かさなかった家城茜もまた、機龍のオペレーターとして現場に復帰する。そして機龍の発表があったそのとき、ゴジラが東京湾に姿を現した……。

 ゴジラ×メカゴジラ

 メカゴジラが登場するとシリーズ終焉が近いというジンクスがあるゴジラ映画。ミレニアムゴジラシリーズもその例外ではないが、メカゴジラ自体の人気は高い。結局はシリーズが続いて飽きられ始めたとき、てこ入れの意味でメカゴジラが投入されるという理屈なわけで、メカゴジラにとっては不本意な起用法ではなかろうか。

 まあ、それはさておき、本作ではゴジラの影が非常に薄い。逆にいうと人間側のドラマやメカゴジラの設定がけっこう充実していることの証しでもある。
 孤独な人生を送ってきた家城茜という女性隊員。その茜が仕事で失敗して心の傷を負い、そこから立ち直る姿が描かれるわけだが、チーム内での確執とか子供との触れあいとか定番ではあるけれども意外なくらいしっかりした展開で、それを釈由美子がこれまた予想以上にしっかり演じているのが好印象。
 メカゴジラにしても、事の起こりからじっくり開発の話なども含めて見せていくのはありそうでないパターン。ゴジラの骨からメカゴジラができるのか、という突っ込みはわかるが、いやこれぐらいなら許そうや。
 実はドラマだけではなく、特撮などもひとつひとつの演出がなかなかいい。合成もこの時期のシリーズの中では粗が見えにくいほうだし、怪獣同士のバトルも武器系だけでなく格闘をちゃんとやっているのも評価できる。

 実はひとつだけ大きな不満があって、それはゴジラのメタファーである核や戦争の部分が完璧なまでに触れられていないということ。
 上でも書いたが、本作はゴジラの影が薄い。メカゴジラと人間側のドラマばかりが全面に出てしまい、ゴジラにスポットがあたっていないのである。つまり本作におけるゴジラの存在はただの怪獣にすぎず、これはゴジラ映画として致命的欠陥ともいえる。ゴジラはやはり絶対的な恐怖の存在でなければならないのだと再認識した次第。
 ただ、エンターテインメントとしての出来は正直悪くないから困る。認めたくないけどしょうがないか、という気持ち(苦笑)。

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Comments
 
ナメコさん

コメントありがとうございます。

>個人的には、もう少し家城茜に焦点をあてて欲しかったです。

この頃の東宝映画にはこれぐらいが限界でしょう(苦笑)。
ゴジラ映画に限りませんが、怪獣に頼らない作りの怪獣映画ほど傑作が多いように思います。ホラー映画なんかもそうですけど、出るまでがいいというか。
機龍の設定は私も好きですが、あれも出動するまでがワクワクしますね。
 
個人的には、もう少し家城茜に焦点をあてて欲しかったです。機龍の設定は好きです。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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