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ピエール・シニアック『リュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュック』(論創海外ミステリ)
気候の変化について行けないのかここ一週間風邪でグダグダ。こういうときに限って面談やら面接の予定が怒濤のごとく入っているから困る。この週末は家でおとなしく体調回復に努めることにする。
以前ほど本を買う量は減ってきているが、どうしても外せない本というものがあるわけで、この一週間のお買い物など。
ローレンス・ブロック『償いの報酬』(二見文庫)
ウィリアム・ピーター・ブラッティ『ディミター』(創元推理文庫)
パトリック・クェンティン『俳優パズル』(創元推理文庫)
ブロックのマット・スカダーは実質的にシリーズ終了と思っていたら、まさかの新刊『償いの報酬』。これは読まないわけにはいかない。
『ディミター』は、あの『エクソシスト』の原作者ブラッティの書いたミステリというわけで、これも興味津々。っていうか『エクソシスト』も十年以上積んであるので、この機会に読めって話だ。
クェンティン『俳優パズル』は復刊だが、ここまできたらダルースものは何とか全部訳してほしいよねぇ。『Run to Death』とか『Puzzle for Puppets』あたりがまだ残っているはず。
本日の読了本はピエール・シニアックの『リュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュック』。
シニアックと言えば、ミステリ史上でも屈指の怪作『ウサギ料理は殺しの味』が有名だが、著作数はそれなりに多いのに日本で紹介されているのはそれのみ。しかも『ウサギ料理は殺しの味』までもが品切れという状態が永らく続き、ようやく創元推理文庫から復刊されたのが三年ほど前の話。それにあやかったか、程なくして論創社から本邦二作目が紹介されたのが、本作『リュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュック』である。
宿無し文無し浮浪者、リュジュ・アンフェルマン。彼は食い扶持を求めて第一次大戦当時のくず鉄が埋まっているアルボンヌの森をめざしていた。その途中で知り合ったのが、ラ・クロデュックと名乗る性別不明の巨人。この男とも女ともつかぬ巨人は、小鳥を捕まえてはそのまま食すという奇人でもあったが、修道院に囚われているという娘を取り戻しに行くという。袖振り合うも多生の縁、旅は道連れ世は情け、と言ったかどうかは知らないが、かくして二人の珍道中が始まった。

解説によるとシニアックの作品は『ウサギ料理は殺しの味』に代表されるメタミステリ的なもの、ノワール系(実はこれがメインらしい)、そして本作をシリーズ第一作とするリュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュックのシリーズ、以上三つに大別できるという。
最初の二つはともかく、問題はこのリュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュックのシリーズである。犯罪者を戯画化、モンスター化することで、その時代の犯罪様相や人間の欲望を描くことが主題となってはいるが、表面的にはブラックなユーモアに包まれたドタバタコメディである。なるほど設定としてはノワールに通じるものもあるが、その表現はかなり好き勝手放題。ミステリとしての仕掛けもほぼないので、読み続けるにはこまずの笑いを楽しめるかどうかがポイントである。
おまけにラストがこれまた驚愕の展開で、こういうのも日本人には馴染みにくい部分。宗教観や文化の違いを大いに痛感する一冊となってしまった。
正直、このシリーズはもうお腹いっぱいなので(苦笑)、できれば初期のメタミステリの方を読んでみたいものだ。
以前ほど本を買う量は減ってきているが、どうしても外せない本というものがあるわけで、この一週間のお買い物など。
ローレンス・ブロック『償いの報酬』(二見文庫)
ウィリアム・ピーター・ブラッティ『ディミター』(創元推理文庫)
パトリック・クェンティン『俳優パズル』(創元推理文庫)
ブロックのマット・スカダーは実質的にシリーズ終了と思っていたら、まさかの新刊『償いの報酬』。これは読まないわけにはいかない。
『ディミター』は、あの『エクソシスト』の原作者ブラッティの書いたミステリというわけで、これも興味津々。っていうか『エクソシスト』も十年以上積んであるので、この機会に読めって話だ。
クェンティン『俳優パズル』は復刊だが、ここまできたらダルースものは何とか全部訳してほしいよねぇ。『Run to Death』とか『Puzzle for Puppets』あたりがまだ残っているはず。
本日の読了本はピエール・シニアックの『リュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュック』。
シニアックと言えば、ミステリ史上でも屈指の怪作『ウサギ料理は殺しの味』が有名だが、著作数はそれなりに多いのに日本で紹介されているのはそれのみ。しかも『ウサギ料理は殺しの味』までもが品切れという状態が永らく続き、ようやく創元推理文庫から復刊されたのが三年ほど前の話。それにあやかったか、程なくして論創社から本邦二作目が紹介されたのが、本作『リュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュック』である。
宿無し文無し浮浪者、リュジュ・アンフェルマン。彼は食い扶持を求めて第一次大戦当時のくず鉄が埋まっているアルボンヌの森をめざしていた。その途中で知り合ったのが、ラ・クロデュックと名乗る性別不明の巨人。この男とも女ともつかぬ巨人は、小鳥を捕まえてはそのまま食すという奇人でもあったが、修道院に囚われているという娘を取り戻しに行くという。袖振り合うも多生の縁、旅は道連れ世は情け、と言ったかどうかは知らないが、かくして二人の珍道中が始まった。

解説によるとシニアックの作品は『ウサギ料理は殺しの味』に代表されるメタミステリ的なもの、ノワール系(実はこれがメインらしい)、そして本作をシリーズ第一作とするリュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュックのシリーズ、以上三つに大別できるという。
最初の二つはともかく、問題はこのリュジュ・アンフェルマンとラ・クロデュックのシリーズである。犯罪者を戯画化、モンスター化することで、その時代の犯罪様相や人間の欲望を描くことが主題となってはいるが、表面的にはブラックなユーモアに包まれたドタバタコメディである。なるほど設定としてはノワールに通じるものもあるが、その表現はかなり好き勝手放題。ミステリとしての仕掛けもほぼないので、読み続けるにはこまずの笑いを楽しめるかどうかがポイントである。
おまけにラストがこれまた驚愕の展開で、こういうのも日本人には馴染みにくい部分。宗教観や文化の違いを大いに痛感する一冊となってしまった。
正直、このシリーズはもうお腹いっぱいなので(苦笑)、できれば初期のメタミステリの方を読んでみたいものだ。