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 パトリック・クェンティンの『巡礼者パズル』を読む。ピーター・ダルースものであり、パズルシリーズの最終作でもある。まずはストーリーから。

 従軍によって精神を患い、妻アイリスとの関係に支障をきたすようになった演劇プロデューサーのピーター・ダルース。そこで医者の勧めにしたがい、二人はしばらく別居することを決める。メキシコに一人旅立つアイリス。だが、そこで彼女は作家マーティンと出会い、恋に落ちてしまう。メキシコへ赴いたピーターは、アイリスから離婚の申し出を受け、傷心の日々を送る。
 一方、マーティンにもまたサリーという妻がいた。別れを切り出したマーティンだったが、サリーはマーティンとその妹マリエッタの過去の秘密を握っており、絶対に離婚はしないと言い放つ。
 微妙な状態のままメキシコで過ごすうち、徐々にマリエッタに惹かれるピーター。そこへマリエッタを気に入ったジェイクというアメリカ人も加わり、五人の間には異様な緊張状態が漂い始める。そして、遂に悲劇は起こった……。

 巡礼者パズル

 これはかなりの異色作だ。
 主要登場人物は上で挙げた五人のみ。だが、その五人が五角関係とでもいうべきややこしい状況を構成しており、その中に被害者がいて犯人がいて探偵役がいるわけだから、これはミステリとしてかなりのチャレンジではある。ただ、あまりに場を限定しすぎているため、チャレンジだとは思うけれど驚嘆するほどの仕掛けがあるわけではない。
 注目すべきは五角関係が織りなす独特のサスペンスにある。愛憎とりまく複雑な人間関係が閉塞感を高め、緊張感を煽る。疑惑の死がさらに緊張感を高め、それがまた新たなトラブルを招く。もはや逃げようのない登場人物たちの心理ドラマが見ものであり、それがあるから謎解きもいっそう映えるという寸法である。驚嘆するほどの仕掛けはないとは書いたが、そういう相乗効果で、ミステリとしては十分楽しめる一冊といえるだろう。メキシコという舞台装置も効果的に用いられており○。

 ところでパズルシリーズというのはクェンティンの本格系作品の代表みたいに言われているが、よく考えると、ほとんどの作品が異色作ではなかろうか。
 これら一連の作品のなかで、クェンティンはピーターを第三者的な超人探偵にするのではなく(実際、失敗も多い)、ピーター自身を完全に関係者として事件の渦中に放り投げている。いわば悩める探偵(ですらないかも)としての存在。クェンティンがやりたかったのは、単なる謎解き小説ではなく、本格探偵小説や探偵役の可能性を探ることではなかったか。
 そんな感想を抱きながら読み終えると、解説では飯城勇三氏が、クイーンのライツヴィルものと絡めた話をしているので思わずニンマリ。

 ともあれこれで手元にあるパズルシリーズの未読は『俳優パズル』のみ。とはいえパズルシリーズはまだ一作、パズルシリーズ以外のピーター・ダルースものはまだ二作残ってるんだよな。
 パズルシリーズのラスト一作『呪われた週末』は創元推理文庫で近々出るようなので、残りは論創社さんに期待するか。いや創元さんでもどちらでもいいんで、よろしく頼みます。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





ポール・ブリッツさん

気持ちはわかります(苦笑)。純粋な本格だと思って読むと、けっこう変なところで足元をすくわれますよね。ピーター・ダルースのように、シリーズものの主人公ですら、これだけ散々な目にあいますから。
まあ、私などはそういうところが逆に好きなんですけどw
【2012/11/06 23:08】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

どうもクェンティンは人が悪すぎて楽しめませんであります。

たいてい、読み終えた後で、どよーんとした感覚が。

うーん……。
【2012/11/06 08:16】 URL | ポール・ブリッツ #-[ 編集]















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