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 仁木悦子の『探偵三影潤全集2 青の巻』を読む。私立探偵の三影潤を主人公とするハードボイルド風味の短編小説集。「ハードボイルド風味」などと書いてしまうと、少し否定的なニュアンスにとられるかもしれないが、決してそんなことはなくて、仁木悦子が本来備えている明快かつ爽やかな作風に謎解き、これにハードボイルドがミックスされた、仁木悦子独特のハードボイルド世界ととらえていただきたい。

 探偵三影潤全集2青の巻

「沈丁花の家」
「蜜色の月」
「青い風景画」
「美しの五月」
「しめっぽい季節」
「色彩の夏」
「夏の終る日」

 収録作は以上。『〜青の巻』では春から夏にかけてをイメージした作品が採られている。全般に謎解きとしてはやや弱いけれど、上にも書いたように独特の仁木ハードボイルドを構築しており、満足度は高い。安心して万人におすすめできる短編集といえるだろう。以下、簡単に作品ごとのコメント。

 「沈丁花の家」は伏線の張り方が巧く、小技が効いた一品。ハードボイルドだと思って読んでいると、いきなり足払いを食らわされる感じがいい。
 「蜜色の月」は小説家の原稿をなくした編集者を助ける話。題材は面白いが、前半部の調査が御都合主義でちょっともったいない。
 「青い風景画」はダイイング・メッセージが大きなポイントだが、個人的にはこれでハードボイルド風味が薄れてしまい、逆効果に感じてしまう。
 「美しの五月」仁木悦子のハードボイルド志向が強く出た作品。こういう暗い題材だとよけい巧さが光る。
 「しめっぽい季節」はハードボイルドがスタイルではなく、テーマにも依存するということを思わせる作品。ミステリとしてはやや弱いか。
 「色彩の夏」も御都合主義が少し強め。ただ、読後感が切なくて嫌いではない。
 「夏の終る日」はバランスもよく、結末の意外性もあり。

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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