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 立て続けに『ROM』139号や湘南探偵倶楽部の『「初期創元推理文庫 書影&作品 目録」 資料編【補遺】』などが届き、同じく湘南探偵倶楽部からマーティン・ポーロック 『殺人鬼対皇帝』の案内が届くという、えらく濃いめの一週間。一方では、ベストセラーランキングを賑わすような作家はまったく読めていないという罠。


 本日の読了本はパトリック・クェンティンの『俳優パズル』。パズルシリーズの第二作目にあたる作品。
 今年は『迷走パズル』や先日読んだばかりの『巡礼者パズル』もあったわけだが、一年にクェンティンの新刊が三冊も出るというのは凄いよなぁ。ではストーリーから。

 アルコール依存症の治療を終え、復活を遂げるべく奮闘する演劇プロデューサーのピーター・ダルース。新人劇作家の素晴らしい脚本が手に入ったうえに、名優も揃い、ブロードウェイのダゴネット劇場ではいよいよリハーサルが始まろうとしていた。
 しかし、実はいわくつきのダゴネット劇場。ベテラン老優がこの劇場での上演を拒み、ある女優は楽屋の鏡に見知らぬ女性が映っていたと話し、大事故からの再起をかける主演男優は楽屋を変えてくれと主張するなど、早くも怪しい雲行きが。
 誰よりもこの芝居を成功させたいピーター。劇場内をかけずり回り、なんとかリハーサルは終了したかに思えたが……なんと楽屋から戻ってきた老優が謎の言葉を残して死亡するという事件が発生。果たして芝居の幕は無事にあがるのか?

 俳優パズル

 自分で書いておいてなんだが、こんな粗筋紹介ではドタバタコメディだと思われるかもしれない(苦笑)。実際は全然そんなこともなく、物語は重苦しい空気に包まれ、シリアスに展開してゆく。
 ともすると戯画化された作りにも思えるのだが、なんせ舞台は演劇界。ほとんどの登場人物が俳優や演劇関係者なので、不自然さはそれほど感じない。むしろほどよくエキセントリックで狂気をはらんだ雰囲気が醸し出され、この辺は前作『俳優パズル』の精神病院という設定にも共通するところだろう。非日常的な場での日常を作り上げ、その中で真理を見出そうとするスタイルは、前作以上にスマートでスピード感もあり、サスペンスもほどよく、構成も巧い。要するに完成度が高いのである。

 とはいえ、本作はやはり本格ミステリ。そちらが腰砕けでは意味がないのだが、謎解き興味も十分に満たしてくれる。厳密にいうと気になるところもないではないが、ミスデレクションや伏線も決まっており、犯人の意外性もOK。
 とりわけ事件の解決と芝居の成功が同時進行で描かれるラストはお見事。芝居をネタにしたミステリはけっこうあるが、本作のそれはトップクラスではなかろうか。それぐらい鮮やかで印象的なのである。

 前作から続くピーターの再起、そしてアイリスとの恋の行方など、シリーズファンへのサービスも満載だし、うむ、これは文句なしの一冊。
 ただ、普通の本格ミステリであれば、探偵自身の物語はサイドストーリーや味つけに過ぎないことが多いのだが、このシリーズに限っては重さがまったく異なることに注意。特に初期の二作はピーターという人間を知る上でも重要なので、できれば原作の発表順に読むことをおすすめしたい。楽しみは間違いなくアップするはずだ。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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