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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ジェフリー・ディーヴァー『追撃の森』(文春文庫)

 本日の読了本はジェフリー・ディーヴァーの『追撃の森』。
 すでにライムものの『バーニング・ワイヤー』も出ているというのに、こっちの読書ペースが遅いのか、それとも刊行ペースが速いのか、今頃『追撃の森』の感想である。っていうか『007 白紙委任状』もまだ積んでいるというのに(苦笑)。

 それはともかく、こんな話。
 警察に緊急通報が入った。場所は別荘地として知られるウィスコン州のモンダック湖畔。すでに帰宅していた女性保安官補ブリンだったが、上司からの連絡でしぶしぶ現地へ向かう。
 だが、そこで待っていたのは殺し屋の銃弾だった。九死に一生を得たブリンは追っ手をまくべく森へ逃れ、そこで同じく殺し屋の手から逃れた女性と出会う。しかし、二人には何の移動手段や連絡手段もなく、援軍も望めない状況であった。果たして二人の女は、殺し屋から逃れることができるのか。

 追撃の森

 二人の女と二人の殺し屋が繰り広げる死闘を描くサスペンスドラマ。ディーヴァーが手掛けるのだから、単なる冒険アクションにはとどまらず、限定された空間でのさまざまな駆け引きが見どころとなる。この辺はリンカーン・ライムと敵方との対決などでもお馴染みの手法であり、さすがに安定感たっぷり。
 もちろん設定全体をひっくり返すような、お得意のどんでん返しも十分。

 ただ、この手のサスペンスものだったら、もう少し短い方がよいだろう。全体の仕掛けを後半で活かすため、よけいじっくりと対決を描いているのだろうが、どうしてもその分、中盤までの長さが気にはなる。正直だれるのである。
 あと、どうせどんでん返しもあると思って読んでしまうので、ひとつひとつの展開が少々虚しくなってしまうというのもある。まあ、これはこっちが悪いのだが(苦笑)、技巧に走りすぎるディーヴァー自身の課題といえないこともない。

 とはいえ、本作も普通以上には面白いのである。シリーズものではなかなかできないネタを試みるなど、ディーヴァーにとって本作を書く意味は確かにある。
 ま、どうしてもハードルを上げた評価になるのは仕方ないし、多少の当たり外れもあるだろうけれど、ディーヴァーにはむしろこういう単発ものをこそどんどん書いてもらいたい。ライムものもいいのだが、個人的には『静寂の叫び』や『監禁』を読んだときの興奮を味わいたいんだよね。

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Comments
 
ksbcさん

あ、ディーヴァーは『魔術師』でストップしてたんですね。では『ウォッチメイカー』だけでも読んでみてはいかがでしょう。これはトリッキーという意味ではこれ以上ないというぐらいトリッキーですからオススメですよ。
あとは短編集の『クリスマス・プレゼント』もなかなかでした。

ソローキン『青い脂』とは、意外な路線ですね。かなりぶっとんだ設定で、非常にスケールの大きい物語のようですが、ううむ、これは気になります。
 
こんばんは。
ここのところ少しだけ余裕があったのですが、なぜか読書が進まずで…。
文藝春秋/編『東西ミステリーベスト100』は、よさそうなので是非モノでゲットします。
ディーバーの人気はとどまることを知らずといった感にお手上げです。
その人気に呑まれてしまって、『魔術師』で進行を止めてしまいました。面白いのは間違いないところでしょうが、それ以外のものさえ追いつかない。そんなところでしょうか(笑)。
これから、思い切って買ったU.ソローキン『青い脂』にとりかかります。

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◆読んだ本◆ ・書名:追撃の森 ・著者:ジェフリー・ディーヴァー ・定価:1,000円 ・出版社:文春文庫 ・発行日:2012/6/10 ◆おすすめ度◆ ・スリルとサスペンス小説度:★★
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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