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 十二月に入り何かと気忙しくなってきたが、先週から仕事絡みの忘年会もスタート。一週間で早くも三つ消化したが、これからが佳境である。まあ酒は基本的に好きなのだが、やはり連チャンは堪える。今週もいくつか控えているし、風邪だけはひかないようにしないとなぁ。といいながら、先週はかなり風邪気味で出動したのでなかなかしんどかったわけなのだが。


 ジョルジュ・シムノンの『青の寝室』を読む。河出書房新社の【シムノン本格小説選】からの一冊。

 主人公はフランスの小さな田舎町で会社を営むトニー。大もうけはできないがそれなりに事業は成功し、妻と一人の娘がいる。だが、そんな彼には一人の愛人がいた。幼なじみのアンドレだが、彼女もまた結婚しており、二人はトニーの弟が経営するホテルで密会を重ねていた。
 だがアンドレの重苦しいほどの愛情表現にトニーは疲れを感じて始めていた。彼女は夫と別れるからトニーにも覚悟を決めるよう繰り返し要求する。しかしトニーはいつものように、家族を愛しているからそれには応じられないと聞き流すだけであった。そして悲劇は起こる……。

 青の寝室

 構成がちょっと凝っている。上では差し障りのない範囲で粗筋を紹介したが、物語自体はトニーとアンドレの密会で幕を開ける。だが、すぐにそれらがトニーの回想であることがわかる。トニーは何らかの理由で勾留されており、判事や精神科医によって質問を受けているのだ。
 トニーは時を遡り、なぜアンドレと不倫するに至ったのかを説明する。そのなかで、いったい何が起こり、なぜトニーが拘留されているかも明らかになってくるという寸法で、この逆倒叙ともいうべきシステムが物語に奥行きを与えている。

 ただ、純粋なミステリではないので、「何が起こったか」という点にそれほど重きは置いておらず、そういう意味でのサスペンスや驚きは少ない。この点は予想どおりといえば予想どおり。
 ポイントはあくまで事件を通して描かれる二人の心理や転落する様である。アンドレという情熱的な女性の本性にも惹かれるが、特に興味深いのは主人公トニー。このどことなく虚無的な男が徐々に追い詰められていく過程は、読み手にもジワジワ不快感が伝わってきてナイス。情熱的なアンドレとの対比も効いている。

 しかし、シムノンはこういう物語が実に上手い。ちょっとだけ変わった設定を用意し、そこでごくごく普通の人々を踊らせ、悲劇に仕立て上げるというテクニック。大作感はないけれど一幕物の優れた芝居を観るような、そんな特別な満足感がある。

 最後に蛇の足。
 本書のカバー折り返しの粗筋紹介では、「何が起こったか」がずばり書いてある。上で書いたようにそれがメインの小説ではないので必ずしも読書の興を削ぐことにはならないが、まあやはり知らないに越したことはない。気になる人は読まないよう御用心。あ、そういう意味では解説も同様なのでご注意を。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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