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 本日の読了本は仁木悦子の『探偵三影潤全集3 赤の巻』。『白の巻』『青の巻』と続いてきた私立探偵、三影潤シリーズの最終巻。本作では『赤の巻』と題して、秋をテーマにした作品がまとめられている。収録作は以下のとおり。

「くれないの文字」
「夢魔の爪」
「どこかの一隅で」
「暗緑の時代」
「アイボリーの手帖」
「緋の記憶」
「数列と人魚」

 探偵三影潤全集3赤の巻

 三影潤ものを読んでいて、いつも気になっていたことがある。それは仁木悦子がどこまでハードボイルドを意識して本シリーズを書いていたかということ。
 本シリーズは仁木悦子の異色ハードボイルドと呼ばれることも多いし、そのテイストは確かにハードボイルドの要素を多分に含んでいる。だが、『探偵三影潤全集1 白の巻』の感想でも書いたのだが、やはり根本的なところが違う。作品の根底にあるのはあくまで謎解きを中心とした本格ミステリであり、主人公たちの行動原理は他者に対する優しさである。絶対とはいわないが、これはどうしてもハードボイルドとは相性が悪い。
 そんなこんなで、ぶっちゃけ著者自身はどうなんだと。そんなモヤモヤが、本書の解説であっさり解消してしまった。
 結論から言うと、仁木悦子はハードボイルドを書いているつもりはまったくなかったとのこと。これは『EQ』八十四年七月号に掲載されているインタビューの中で明らかになっている。曰く「その気はまったくないですね。……自分の好きなものはなるべく書かないようにしているんですよ」。
 長篇『冷え切った街』などはとりわけハードボイルド味が強いが、作品によってはまったくハードボイルドっぽくないものもある三影潤もの。この返答でその理由も納得である。ただ、本人のハードボイルド嗜好が与える影響は決して小さくなく、結果として仁木流のハードボイルドに昇華したということだろう。
 っていうか、『EQ』八十四年七月号ってリアルタイムで読んでるはずなんだけどなぁ。全然憶えてなかったぞ(苦笑)。

 内容的には非常に安定した作品ばかり。驚くようなトリックなどはないけれど捻りはきいているし、扱っている事件が家族の暗部をえぐり出すようなネタが多く(こういうところもハードボイルド的なのだよなぁ)、想像以上に読み応えがある。
 密室のなかで催眠術をかけられ、伯父を殺害したという学生の事件を調査する「夢魔の爪」。同じ夢を何度も見てしまう理由は過去の殺人事件にある、という女性の依頼を調査する「緋の記憶」。全体に満足度は高いけれど、この二作は特におすすめ。
 逆にワーストも挙げておくと三影潤デビュー作の「くれないの文字」。ダイイング・メッセージものだが、これはヤバイ。仁木悦子でもこういう作品を書いていたのかという意味では興味深いけれど(笑い)。
 まあ、そんな玉に瑕も含め、楽しめる短編集ではありました。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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