- Date: Sat 16 02 2013
- Category: 評論・エッセイ 町田暁雄
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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町田暁雄/監修『別冊宝島1957 増補改訂版 刑事コロンボ完全捜査記録』(宝島社)
かつて2004年に出版された『別冊宝島973 刑事コロンボ完全事件ファイル』は「刑事コロンボ」のガイドブックとして非常にありがたい一冊だったが、その後2006年には改訂増補版となる『別冊宝島1330 刑事コロンボ完全捜査記録』が登場。こちらは新シリーズの解説が大幅に増えた、正に決定版ともいうべきものだった。
そして2013年。さらなる増補改訂がなされた『別冊宝島1957 増補改訂版 刑事コロンボ完全捜査記録』が刊行された。正直、2006年版が相当充実したものだったので、これ以上のものとなるとよほどの企画勝負、あるいは本格的な評論書でないと意味が無いのではと思っていたのだが。ううむ、店頭でみて、やはり買わずにはいわれなかった。

気になるのは何が増補改訂されたのか、ということだろうから、本日はそれを検証してみよう。
まず2006年版からなくなった記事だが、これはコラム「コロンボ・クッキング チリ・コン・カーンを作ろう!!」のみ。これはもともとページ数調整の意味合いが強そうな1ページのミニコラムだし、題名どおり内容も他愛なかったので、なくなっても別段こまることはない(笑)。
一方、追加された記事は「刑事コロンボ データファイル」から「凶器あれこれ」「食べ物いろいろ」「舞台劇 殺人処方箋」、以上3つのコラム。そして巻末の「名犯人せいぞろい」と題した新旧総計七十二人の犯人のイラスト付きデータファイルである。
この「名犯人せいぞろい」が本作の最も大きな変更点であり、売りとなる部分。こうして俯瞰的に犯人像を眺めることで、シリーズとしての狙いなどが浮かび上がってきてけっこう興味深い。ただ、正直コアな人向けの企画だなぁとは思うが(苦笑)。
また、「舞台劇 殺人処方箋」はあまり情報のないコロンボのルーツを解説したナイス企画。筆者は拙ブログでリンクさせて頂いている「めとLOG ~ミステリー映画の世界」のめとろんさん。さすが。
構成やレイアウトが変更されている記事は、「刑事コロンボ データファイル」に含まれるコラムの類。このあたりは見た目が多少変わっているものの、テキストは前作の流用である。
例外的にテキストが書き直されているのは「調書ピーター・フォーク」。コロンボを演じ、先頃亡くなったピーター・フォークの生涯をまとめたコラムだが、気になったのは内容よりもむしろ文体である。というのも前作の「である体」から「ですます体」に変更されていたからで、実はこれが案外重要に思えてしまった。
基本的にはガイドブックや評論の類は「である体」で十分である。この表現が難しい、堅苦しいと思うのであれば、その人はまだその文章を読む資格がないということである。コロンボを演じるピーター・フォークの生涯を短くまとめ、読者にその経歴やコロンボドラマとの関わりを紹介するという目的で書かれた前作においては、まずは客観的に、そしてコンパクトにまとめることが優先されたはずで、その結果としての「である体」である。
ところが本書ではそれが「ですます体」に改められた。正直、増補改訂版であるから、作り手としてはできるだけ無駄は省きたい。テキストの流用や新規書き下ろしはあっても、同じ内容を書き直すというのは出版ビジネス上あまり効率のいい話ではないのである(もちろん間違い等を正すのは別である)。それをわざわざ「ですます体」に書き直した。
思うに、これはピーター・フォークが亡くなったことで、作り手がまだ客観的に彼の生涯を語れる状態にないということではないか。時が経てばそれもまた解消されるのだろうが、コロンボファンにとってピーターの死はまだまだ受け入れにくい事実なのだろう。ファンが数十年にわたって慣れ親しんできたピーターはもはやただの俳優ではないのである。そんな故人の思い出を語るとき、文体はやはり親しみを込めた「ですます体」であるべきと考えたのではないだろうか。
まあ、管理人の勝手な妄想かもしれないけれど。
そして2013年。さらなる増補改訂がなされた『別冊宝島1957 増補改訂版 刑事コロンボ完全捜査記録』が刊行された。正直、2006年版が相当充実したものだったので、これ以上のものとなるとよほどの企画勝負、あるいは本格的な評論書でないと意味が無いのではと思っていたのだが。ううむ、店頭でみて、やはり買わずにはいわれなかった。

気になるのは何が増補改訂されたのか、ということだろうから、本日はそれを検証してみよう。
まず2006年版からなくなった記事だが、これはコラム「コロンボ・クッキング チリ・コン・カーンを作ろう!!」のみ。これはもともとページ数調整の意味合いが強そうな1ページのミニコラムだし、題名どおり内容も他愛なかったので、なくなっても別段こまることはない(笑)。
一方、追加された記事は「刑事コロンボ データファイル」から「凶器あれこれ」「食べ物いろいろ」「舞台劇 殺人処方箋」、以上3つのコラム。そして巻末の「名犯人せいぞろい」と題した新旧総計七十二人の犯人のイラスト付きデータファイルである。
この「名犯人せいぞろい」が本作の最も大きな変更点であり、売りとなる部分。こうして俯瞰的に犯人像を眺めることで、シリーズとしての狙いなどが浮かび上がってきてけっこう興味深い。ただ、正直コアな人向けの企画だなぁとは思うが(苦笑)。
また、「舞台劇 殺人処方箋」はあまり情報のないコロンボのルーツを解説したナイス企画。筆者は拙ブログでリンクさせて頂いている「めとLOG ~ミステリー映画の世界」のめとろんさん。さすが。
構成やレイアウトが変更されている記事は、「刑事コロンボ データファイル」に含まれるコラムの類。このあたりは見た目が多少変わっているものの、テキストは前作の流用である。
例外的にテキストが書き直されているのは「調書ピーター・フォーク」。コロンボを演じ、先頃亡くなったピーター・フォークの生涯をまとめたコラムだが、気になったのは内容よりもむしろ文体である。というのも前作の「である体」から「ですます体」に変更されていたからで、実はこれが案外重要に思えてしまった。
基本的にはガイドブックや評論の類は「である体」で十分である。この表現が難しい、堅苦しいと思うのであれば、その人はまだその文章を読む資格がないということである。コロンボを演じるピーター・フォークの生涯を短くまとめ、読者にその経歴やコロンボドラマとの関わりを紹介するという目的で書かれた前作においては、まずは客観的に、そしてコンパクトにまとめることが優先されたはずで、その結果としての「である体」である。
ところが本書ではそれが「ですます体」に改められた。正直、増補改訂版であるから、作り手としてはできるだけ無駄は省きたい。テキストの流用や新規書き下ろしはあっても、同じ内容を書き直すというのは出版ビジネス上あまり効率のいい話ではないのである(もちろん間違い等を正すのは別である)。それをわざわざ「ですます体」に書き直した。
思うに、これはピーター・フォークが亡くなったことで、作り手がまだ客観的に彼の生涯を語れる状態にないということではないか。時が経てばそれもまた解消されるのだろうが、コロンボファンにとってピーターの死はまだまだ受け入れにくい事実なのだろう。ファンが数十年にわたって慣れ親しんできたピーターはもはやただの俳優ではないのである。そんな故人の思い出を語るとき、文体はやはり親しみを込めた「ですます体」であるべきと考えたのではないだろうか。
まあ、管理人の勝手な妄想かもしれないけれど。
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>こんにちは、めとろんです。拙ブログにコメントを頂き、ありがとうございました!
どういたしまして。本だけでも楽しいのですが、ああした関係者の裏話が読めるのはけっこう重要ですよね。楽しませていただきました。
なお、「ですます体」に関する考察は単なる妄想ですので、あまり真面目にとらえていただかなくてけっこうです。
もし、次作もあるのであれば、次こそは宝島社が財なげうって、写真もどっさり収録してくれると嬉しいですね。ぜひ担当編集者様にお伝えください(笑)。