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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


若狭邦男『探偵作家発見100』(日本古書通信社)

 以前にコメントでおっさん様から教えていただいた『狩久全集』。それがいよいよ一般販売されたというニュースをとあるサイトで目にしたのは二週間ほど前。で、一分ほど迷ったものの、こういうブログをやっている身としては、やはりこれは買うしかあるまいと発売元にメールを送ったのが一週間前。そして本日、それが無事に到着した。本当はもっと早く着いていたのだけれど、不在だったために結局、本日届けてもらうことになったのだが、いや、その二日間の待ち遠しかったこと。
 お値段もそこそこかかってしまったが、これで現時点で判明している狩久作品が全部読めるわけだし、絶対読めないと思っていた幻の遺稿、さらには日記まで収録しているのだからお買い得といってよい。あの杉本画伯の手掛けたイラストも雰囲気十分で、所有する喜びもひとしお。
 仕事がいろいろとてんばっているので、これはまたとないストレス解消になりそうだわ(笑)。


 若狭邦男氏の『探偵作家発見100』を読む。

 探偵作家発見100

 『探偵作家追跡』『探偵作家尋訪』に続く一冊で、数々の探偵小説誌や大衆小説誌、カストリ雑誌などを元に、幻の作家たちの足跡を辿っている。ただ、ドキュメンタリー仕立てではなく書肆データの性格が強い。とにかく情報の量や濃さが半端ではなく、自分がいかに浅い探偵小説好きかを痛感させてくれる一冊でもある。
 なんせ、そこらの探偵小説のガイドブックをどれだけ逆さにして振ってみても、まったく出てこないような名前ばかりが並んでいるわけで(ま、中には割にメジャーな作家もいて、その方々まで幻の作家云々はちょっとアレだけれども)、どんだけこの道が奥深いのかということである。本書では取り上げている作家もこれまでより多く、作家という観点だけでなく探偵小説史という観点からも貴重な資料になるのではないだろうか。

 ただ、これだけ素晴らしい内容ながら、実は残念なところもないではない。それが文章のわかりにくさ。ネット上の感想を見る限りでもそこを指摘する人は多く、確かにそのとおり。また、資料性の高い内容をテキストのアキや改行、箇条書きだけで見せようとするので、本としての読みにくさもある。
 実はこの欠点は『探偵作家追跡』の頃から目についていた部分。『探偵作家追跡』の感想でも書いたが、著者のお仕事はおそらく著述業ではないはずだから、そこは編集者側でフォローするべきであろう。それがなかなか改善されないのはつくづく残念だ。

 とはいえディープな探偵小説ファンには間違いなく買いの一冊。いずれはこの本を参考にして、書かれている作家をすべて読んでみたいものだが、果たしていつになるやら。

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Comments

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著者より(若狭)さん

>第1巻と第2巻にまたがる場合があることから、第2巻に、あわせてつける予定です。

あ、一巻二巻共通の索引なんですか。だったらいいですね。
期待しております!

Posted at 17:15 on 11 12, 2016  by sugata

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探偵作家発掘雑誌第1巻

暖かいお言葉、ありがとうございます。人名索引をつけるのに、第1巻と第2巻にまたがる場合があることから、第2巻に、あわせてつける予定です。今後ともよろしくおねがいします。著者も読者のひとりなので、読者の方々ひとりひとりが著者の宝です。

Posted at 12:31 on 11 12, 2016  by 著者より

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著者より(若狭)さん

なんと。すでに二巻もほぼできあがっているとは。これまた待ち遠しいです。発売されたらもちろん買いますよ。

>全15章に登場した作家の「人名索引」を付ける予定です

索引はいいですね。第一巻も改訂版など出す機会がありましたら、ぜひ加えてくれると嬉しいです。

Posted at 11:05 on 11 12, 2016  by sugata

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探偵作家発掘雑誌第1巻

ありがとうございます。すでに第2巻は完成しています。それには、全15章に登場した作家の「人名索引」を付ける予定です。どこまで著者を選択すればいいのか、最後の難関にさしかかっています。著者も読者ですから。暖かく、アドバイスお願いいたします。

Posted at 05:29 on 11 12, 2016  by 著者より

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>著者より(若狭)さん

まさか著者の方からコメントいただけるとは。どうもありがとうございます。『探偵作家発掘雑誌 第一巻』はもちろんすでに購入済みです。相変わらずディープな内容そうで、また勉強させてもらいます。

Posted at 00:47 on 11 12, 2016  by sugata

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探偵作家発掘雑誌第1巻

今回も、「探偵作家」シリーズで、その名も『探偵作家発掘雑誌第1巻』。前著に引き続き、よろしくお願い致します。前著の購入ありがとうございます。著者より

Posted at 06:05 on 11 11, 2016  by 著者より

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Ksbcさん

ふふふ、けっこう頑張りましたよ。

Posted at 00:57 on 04 06, 2013  by sugata

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うらやましい

こんにちは。
うらやましい、ウチは絶対に無理です(笑)。

Posted at 13:50 on 04 05, 2013  by Ksbc

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くさのまさん

買いました(笑)。本で一回に使った金額としてはおそらく自分史上1位です。まあ、全集まとめてなら他にも匹敵するものはいろいろありますが、それらはバラで買ったり古書で安く買ったりしてますからねぇ。
実は誕生日に近いこともあって、自分への贈り物みたいなもんです(爆)。

大阪圭吉は盛林堂さんのアレですね。フリーマンは『キャッツ・アイ』のことでしょうか。もちろん買っております。ただROM叢書はカバンに放り込んでいると破れそうで、なかなか通勤読書には厳しいというか。いつも後回しになってしまいます(苦笑)。

Posted at 01:28 on 04 02, 2013  by sugata

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買われましたか!

 自分もミステリマガジンで『狩久全集』の存在を知りましたが、初めに目の錯覚かと思い、次に(失礼ながら)新手の詐欺ではないかと(笑)。
 75000円はキツいので断腸の思いでスルーですね~。せめて大阪圭吉ぐらい購入したいと考えています。
 そういえばフリーマンは購入されたのですか?

Posted at 00:55 on 04 02, 2013  by くさのま

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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