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デイヴィッド・ハンドラー『殺人小説家』(講談社文庫)
元売れっ子作家にしてゴーストライターのホーギー。そんな彼のところへ1章分の小説と手紙が送られてきた。その出来の良さに驚いたホーギーだが、翌朝その小説に書かれたとおりに殺人事件が発生する。いったい誰が、何のために? 警察の捜査も開始されるが、それをあざ笑うかのように第二の殺人が起こり、小説の第2章も送られてくる。このときホーギーは、警察に話せないある事実に気がついていた……。
まずは及第点といってよいだろう。シリーズのファンなら、ホーギーとルルやメリリーとのやりとりだけでも十分楽しめるし、やはりその点が一番の魅力だとは思う。だがハンドラーの偉いところは、それで満足することなく、ミステリーとしてもしっかりツボを押さえた作りを実現している点だ。本作でもパズラーに負けないぐらい伏線や手がかりを配し、きれいにオチを決めているのはさすが。傑作とまではいかないが、誰にでも安心しておすすめできる良心的な一冊である。
ただ、本書を最後に本国ではシリーズが途絶えているらしく、それがなんとも残念だ。やや印象的なラストシーンではあるが、ここで打ち止めにするようなラストでもあるまい。しばらくは別シリーズで鋭気を養い、またホーギーの復活を願うばかりである(シリーズが復活した際は、トレーシーがけっこういい役回りで登場しそうな気がする。あくまで予想だが)。
Comments
ありゃ、記憶違いをしてしまいました(汗)。
レベルが落ちたと思ってブクオフに叩き売ってしまったので。
でもシリーズ全部通してまたほしくなってきたなあ。
ミステリファンの業ですね(^^)
Posted at 17:24 on 04 20, 2009 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
おっ、ハンドラーをお読みとは意外ですね。
まあ、単品で見ると確かに初期の方が作品としては上でしょうが、中期以降はシリーズとしての興味で引っ張る部分があって、それはそれでいいのではないでしょうか。ただ、後期は比較的作品が長すぎるのがちょっといただけないです。このテイストならもう少しサクッとまとめてくれた方がいいんですけどね。
ちなみに『自分を殺した男』→『自分を消した男』ですね。
梶龍雄、私もいつかは読みたんですが、ううむ、いつになるやら。
Posted at 21:39 on 04 19, 2009 by sugata
ホーギーのシリーズは大好きでした。「自分を殺した男」までは読みましたが、あれは内容もあまりいいとは思えませんが、それよりもタイトルが悪いですね。なんてひどい訳題だと思ったら、原書もそうだった(笑)。
そのために、その後の2冊もひどいのかと、買ったはいいものの読んでないのですが、そうですか面白いですか。これは読んでみないとなあ。
いつか読んだらまた感想書きますので。
図書館で、梶龍雄「葉山宝石館の惨劇」を借りてきて読みました。「清里高原殺人別荘」ほどの驚愕の大トリックはなかったものの、これまた実によく考えられたミステリでした。
もうすっかりファン(笑)。でも近所のブクオフにはないのであります(泣)。遠出して古本を探すか……。
Posted at 13:45 on 04 19, 2009 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
いやいや、これからまた集め直す楽しみができたという考え方もできますから(苦笑)。
Posted at 01:12 on 04 21, 2009 by sugata