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大坪砂男『大坪砂男全集1立春大吉』(創元推理文庫)
薔薇十字社の全集を大枚はたいて買った身には少々複雑な気分ではあるが、未収録も含めた文庫版全集ともなれば、そりゃ買わないわけにはいかんよなぁ、というわけで本日の読了本は『大坪砂男全集1立春大吉』。まずは収録作。
「赤痣の女」
「三月十三日午前二時」
「大師誕生」
「美しき証拠」
「黒子」
「立春大吉」
「涅槃雪」
「暁に祈る」
「雪に消えた女」
「検事調書」
「浴槽」
「幽霊はお人好し」
「師父ブラウンの独り言」
「胡蝶の行方 ──贋作・師父ブラウン物語──」

本全集はテーマ別にまとめられているようで、第一巻の『立春大吉』は警視庁鑑識課技師・緒方三郎もの全短篇を含む本格探偵小説集となっている。以前に国書刊行会から出た『天狗』はいうなれば傑作集だったから、本格を集めた本書とはけっこう印象が異なる。
というのも大坪砂男の魅力は(あくまで個人的な主観だが)、あくまでその文体や語りの妙にあり、ガチガチの本格要素はむしろマイナスなのではないかと思うのだ。いや、マイナスは言い過ぎかもしれないが、何とも味気ない機械的トリックの数々が作品世界のバランスを非常に危うくしている。特に本書のように本格を中心にすると、そのバランスの悪さが全面的に感じられるのだが、それをまた強引にねじ伏せる文体と構成の妙がたまらない。しかも著者自身はそういう部分に凝りはしたが、愛していたのは論理だというから、このギャップがまたそそるではないか。
この文体に拒否反応を示す人もいるようだが、普通の平易な文体であれば、本書の魅力が著しく減じることは間違いない。
とりあえず、そういう魅力が大きく感じられる作品として、本書では「立春大吉」と「涅槃雪」を挙げておこう。確かにクセはあるけれど、一度は読んでおいて損はない。
「赤痣の女」
「三月十三日午前二時」
「大師誕生」
「美しき証拠」
「黒子」
「立春大吉」
「涅槃雪」
「暁に祈る」
「雪に消えた女」
「検事調書」
「浴槽」
「幽霊はお人好し」
「師父ブラウンの独り言」
「胡蝶の行方 ──贋作・師父ブラウン物語──」

本全集はテーマ別にまとめられているようで、第一巻の『立春大吉』は警視庁鑑識課技師・緒方三郎もの全短篇を含む本格探偵小説集となっている。以前に国書刊行会から出た『天狗』はいうなれば傑作集だったから、本格を集めた本書とはけっこう印象が異なる。
というのも大坪砂男の魅力は(あくまで個人的な主観だが)、あくまでその文体や語りの妙にあり、ガチガチの本格要素はむしろマイナスなのではないかと思うのだ。いや、マイナスは言い過ぎかもしれないが、何とも味気ない機械的トリックの数々が作品世界のバランスを非常に危うくしている。特に本書のように本格を中心にすると、そのバランスの悪さが全面的に感じられるのだが、それをまた強引にねじ伏せる文体と構成の妙がたまらない。しかも著者自身はそういう部分に凝りはしたが、愛していたのは論理だというから、このギャップがまたそそるではないか。
この文体に拒否反応を示す人もいるようだが、普通の平易な文体であれば、本書の魅力が著しく減じることは間違いない。
とりあえず、そういう魅力が大きく感じられる作品として、本書では「立春大吉」と「涅槃雪」を挙げておこう。確かにクセはあるけれど、一度は読んでおいて損はない。
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Ksbcさん
ううむ、早い(笑)。
私は読書が進まないものの、本日はディーノ・ブッツァーティの『タタール人の砂漠』をゲットしました。岩波文庫というのがちょっと驚きです。
Posted at 00:47 on 04 17, 2013 by sugata