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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ジェームズ・フローリー『新・刑事コロンボ/狂ったシナリオ』

 いやあ、今日は暑かった。久々に青空が見えたので、ここぞとばかりに洗濯や掃除に集中すると、あっという間に汗が噴き出してくる。ひと仕事終えた後はたまらずシャワーを浴びて、昼間からDVD&ビール。ああ、久々にゆっくりした休日。

 DVDはデアゴスティーニで刊行が始まった新・刑事コロンボから一本。ジェームズ・フローリー監督による新シリーズの二作目となる『新・刑事コロンボ/狂ったシナリオ』である。

 本作の犯人を務めるはスティーヴン・スピルバーグを彷彿とさせる若きSFX映画監督、アレックス・ブレイディ。天才と呼ばれ、二十代の若さで財も名声も獲得したアレックスだったが、突然幼なじみのレニーが訪ねてきたことで彼の転落劇が始まる。
 レニーの目的は復讐だった。かつてレニーの妹はアレックスがアマチュア時代に撮った映画に出演していた。だが妹はその撮影に向かう途中でバイクで事故死。だが、真実は撮影中の事故であり、映画会社にスカウトされていたアレックスは彼女が撮影現場に現れなかったと証言し、見殺しにしていたのだ。
 撮影現場にいた友人からその証拠フィルムを手に入れ、初めて事実を知ったたレニー。彼はアレックスに詰め寄るが、逆にアレックスの策にはまり、映画スタジオで感電死させられてしまう……。

 新・刑事コロンボ/狂ったシナリオ

 犯人アレックス役のフィッシャー・スティーヴンスがよい。熱病に浮かされたように語る映像論のシーン、喜怒哀楽の変化が激しいところなど、高慢ながらも繊細な若き天才映画監督を好演している。
 これにコロンボが大人の余裕というか、ねちっこく絡んでくることで、二人のタイプの違いがくっきりと浮かび上がる。考えると旧シリーズでのコロンボはまだまだ若くて(当たり前だけど)、犯人がコロンボより年上のパターンが多かったような。だからこそラストがより痛快になるのだが、新シリーズでは逆にコロンボの方が年長さんであることがほとんど。だから、あまりコロンボがやりすぎると、少々犯人がかわいそうに思えることもしばしばである。それはそれで面白いのだが、やはりドラマの設定としては旧シリーズのコロンボが好みだ。

 本作はミステリとしてもしっかりしている。計画的な殺人ではないだけにアレックスのミスがけっこう響き、そこをコロンボが崩していく部分は見応えがある。クリームソーダの飲み残しからコロンボが推理するシーンなどは、ホームズばりでなかなかお見事。靴のかかとやチケットなどの使い方も巧い。

 難をいえばラストのシーン。コロンボが犯人に仕掛ける逆トリックは伏線もほとんど張っておらず、アンフェアなこと夥しい。
 また、それを芝居として見せる演出があまりに「らしくなく」て、セルフパロディに陥っているのも残念。コロンボが芝居っけたっぷりに種明かしを見せるのは別に珍しくもなく、確かにそれが魅力のひとつではある。ただし、それらはあくまで「芝居っけ」であるから楽しいのであって、本当に芝居をしてしまってはリアリティの欠片もなくなってしまう。なぜ刑事が犯人を捕まえるためにここまで演出しなければならないのか。
 そういえば新シリーズ一作目の『汚れた超能力』でもこうしたやりすぎの部分があった。新シリーズの目指すハデハデな演出が仇となっているのだろうが、こういうのは加減が難しいんだろうな。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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