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 パトリック・クェンティンの『人形パズル』を読む。ピーター・ダルースものにしてパズルシリーズの第三作である。

 演劇プロデューサーのピーター・ダルースも戦時のいまでは海軍中尉。愛しの妻アイリスとも離ればなれの生活を送っていたが、ようやく休暇を取得し、久々の逢瀬となった。ところが宿はとれない、制服は盗まれる、挙げ句の果てにはアイリスの従姉妹が殺害され、容疑はなんとピーターに。私立探偵のコンビと協力し、真相を探るべく行動を起こすが……。

 人形パズル

 もともと我が国ではサスペンス小説の書き手として紹介されることが多かったパトリック・クェンティン。だが、ここ数年で初期のパズルシリーズが新訳で刊行されるに至り、本格ミステリーの作家として見直されるようになったのは皆様ご存じのとおり。そして本作『人形パズル』発売でようやく全パズルシリーズがお手軽に読めるようになったのだが、あらためて見てみると、本格の体で書かれたパズルシリーズも実はけっこう異色作揃いということがわかる。
 なんといっても特徴的なのは、ダルースが主役ではあるが、イコール探偵役ではないということ。もちろん探偵役の場合もあるのだが、ワトソン役や容疑者、ときには被害者みたいな位置づけもあったりと非常に多彩である。同時期に書かれたクイーンらをはじめとする本格の書き手とは、そういう意味で一線を画しており、シリーズものでありながらストーリーや設定はとにかくバラエティに富んでいる。

 さて、本作も本格ミステリというよりは、巻き込まれ型のサスペンス小説というほうが適切だろう。1940〜50年代に流行っていたハリウッドのサスペンス映画、早い話がヒッチコック映画を彷彿とさせるようなハラハラドキドキをこじゃれた感じで見せる、楽しいサスペンス映画のイメージである。
 殺人事件に巻き込まれて、妻のアイリスと共に右往左往する姿はありがちといえばありがちな演出だが、ここに師匠役の私立探偵を絡め、物語を要所要所で締めつつもテンポよく興味をつないでいく手際は実に見事。舞台をサーカスに移す後半はいっそう快調で、まったく退屈しない。
 ただ、そういったハラハラドキドキの流れで見せる小説のため、これまで紹介された作品に比べると、謎解きや意外性に欠ける感は否めない。ラストでどんでん返しはあるものの、まあ、これはマニア相手だと想定の範囲内だろう。

 そんなわけでまずまず面白くは読めたが、傑作というにはちょいと厳しい。あ、もちろんクェンティンやダルースのファンなら必読である。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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