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 湘南探偵倶楽部さんからロジャー・スカーレットの『白魔』と『ポプラ社 少年探偵冒険小説 書影集』が届く。さっそく書影集の方をパラパラと眺めてみたが、乱歩や南洋一郎、山中峯太郎といった少年小説ではお馴染みの方から香山滋や保篠竜緒といったレアどころまでずらりと並び、いやはや壮観。
 ただ、書影を見ていると現物が読みたくてたまらなくなるのが困ったものだ。こういうものまで手を出し始めるとえらいことになるのがわかっているので、まあ自粛はするけれど。


 本日の読了本はE・C・R・ロラックの『悪魔と警視庁』。
 我が国でロラックといえば、これまでは国書刊行会の『ジョン・ブラウンの死体』、長崎出版の『死のチェックメイト』ぐらいしか読むことはできなかったが、本国イギリスでは七十作以上も作品を残した黄金期を代表する人気作家である。

 舞台は秋深まる霧のロンドン。偶然ひったくりの現場を目にしたマクドナルド警部は、車から飛び出して女性を救い、その後、警視庁に車を置いて帰宅する。ところが翌朝、車に戻ったマクドナルドが目にしたものは、後部座席に押し込まれた刺殺死体。しかも全身に高級そうな悪魔〈メフィストフェレス〉の衣装を見にまとっていた。
 捜査を始めたマクドナルドは、ひったくりがあった夜、仮装舞踏会があったことを知るが……。

 悪魔と警視庁

 探偵役の車に悪魔の衣装を着た死体が残されるという突飛な導入。ユーモアと不条理が入り混じった印象で掴みはOKながら、その後の展開が非常に地味でもったいない。上で挙げた二冊もそうだったが、基本的にオーソドックスな作風で滅多に型を崩さないため、ぐいぐい引き込んでいく力やけれんには欠けている。
 登場人物に関してもそう。丁寧に綴ってはいるし、それなりに個性的なキャラクター揃いなのだが、マクドナルドをはじめとしていまひとつ弾け方が足りないため、印象には残りにくいのが残念だ。

 ただ、退屈な作品ではない。文章は変に凝るところがないというか、この時代には珍しいほどスマートでテンポがいいし、マクドナルドとともに捜査の過程を楽しむ気持ちで読めばリーダビリティは高い。謎解きもまずまずといったところで、クラシックに対して過大な期待さえ抱かなければ、この味わいは評価すべきだろう。
 何かひとつ、ロラックでなければ、という部分があればもっと良いのだろうが、この時代の作家がすべてクリスティやクイーンというわけではないしね(苦笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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