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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ガイ・ハミルトン『007 死ぬのは奴らだ』

 この週末に観たDVDの感想など。ものは『007 死ぬのは奴らだ』。シリーズ通算八作目。監督はおなじみガイ・ハミルトンである。

 カリブ海の小国サン・モニクで調査を進めていた英国の諜報部員が相次いで三名も殺害された。ボンドはさっそくアメリカへ飛び、CIAのフィリックス・ライターと落ち合い、渡米していたサン・モニクの大統領、Dr.カナンガを捜査する。しかし、その動きを予測していた組織は逆にボンドを襲い……。

 007死ぬのは奴らだ

 記念すべきロジャー・ムーアの初登場作品である。男臭さが売りだった初代ショーン・コネリー、原作の雰囲気に近いと評された二代目ジョージ・レイゼンビー。さて、三代目となるムーアはどのようなタイプかといえば、大人の余裕を感じさせるジェントルなボンドであった。
 コネリーのようなアクの強さはないが、バランスがとれており、シリアスもコメディにも対応可能で万人受けする魅力をもっていたといえる(個人的な好みでいうと、ちょっと甘すぎる嫌いはあるが、まあ許容範囲である)。
 ただ、そうはいっても一世を風靡したコネリーボンドの後ではやはり分が悪い。本来なら相当風当たりが強くなる可能性もあったのだが、ムーアにとってラッキーだったのは、一作とはいえ間にジョージ・レイゼンビーが挟まってくれたことだろう。「まあ、アレに比べたら」という当時のファンの声が聞こえるようである(笑)。

 というわけで新生ボンドは比較的スムーズに移行できた印象だが、映画の出来自体はちょっと微妙。
 ひとつひとつの要素を取り上げるとそれほど悪くはない。ブードゥー教やタロット占いで醸し出すオカルティズム、蛇やワニや鮫を使ったハラハラシーン、列車での対決、モーターボートでのチェイス、効果的に使われる秘密兵器の腕時計やガス銃など、見どころは多い。
 ただ、見どころは多いのだが、これまでの作品にあったシーンの焼き直しが多く感じるのは気のせいか。列車での対決然り、モーターボートのチェイス然り、蛇や鮫のシーンや敵組織の基地内でのアクションもそうだ。新生ボンドの門出に過去の美味しいとこどりを狙ったのか、それが見事に裏目に出て、既視感ばかりが先に立つのは残念。
 しかもネタを詰め込みすぎたせいか、意外にストーリーのメリハリがよくなくて散漫な感じも受けてしまう。

 個人的にランク付けすると中の下もしくは下の上といったところか。もちろん時間つぶしに観るには全然問題ないレベルではあるのだが。ううむ。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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