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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


梶龍雄『天才は善人を殺す』(徳間文庫)

 久々に梶龍雄を一冊。長篇第四作目にあたる『天才は善人を殺す』。

 芝端敬一の父は会社で服毒自殺をして亡くなった。親戚から借金をした直後に大金を騙し取られたことが原因だと思われた。父の後妻であり、敬一には義母となるめぐみは、その死を忘れるため、敬一に金を騙し取った犯人を一緒に捜してくれるよう懇願する。
 義母にほのかな恋心を抱いていた敬一は、大学の友人であるお京や四辻、探偵小説マニアの高村らと調査に乗り出すが、その前にキャッシュカードの問題が立ちはだかり、そして父の死に隠された真相が徐々に浮かび上がる……。

 天才は善人を殺す

 主人公が若者ということで、デビュー作の『透明な季節』や二作目の『海を見ないで陸を見よう』が連想されるが、これらは過去を舞台にしたリリカルな作品だった。ところが本作では舞台を現代におき、しかも若者の風俗をかなり盛り込んで思いのほかコミカルな雰囲気でまとめている。
 加えて探偵小説マニアを登場人物に配することで、積極的に推理する過程を物語の芯に据えたり、随所に探偵小説談議を展開するなど、随分とゲーム性・娯楽性を前面に押し出したスタイルになっている。

 当時、『透明な季節』や『海を見ないで陸を見よう』などが探偵小説的な味に乏しいという批判もあったようで、本作は著者なりの挑戦あるいは回答なのであろう。
 だがその挑戦は正直、それほど効を奏していない。そもそもこれが本当に著者のやりたかったことなのかという疑問がある。
 というのもバリバリの謎解きメインの本作においても、著者は主人公敬一の父に対する想い、義母への愛情を絡めた三角関係など、これまでの作品のテーマに通じるような題材をもきっちりと盛り込んでいるからである。だが先述のとおりいかんせんコミカルな作風の本作において、それらの要素はどうしてもただの添え物にすぎず、見事な融合を見せていた『透明な季節』や『海を見ないで陸を見よう』には及ぶべくもないのだ。

 それでも本格探偵小説として強烈な何かがあれば話は別だが、こちらもパンチ不足。密室をはじめいろいろなネタを仕込んではいるのだけれど、仰天の真相というには程遠い。梶龍雄ならとにかく何でも読んでやろう、という人向けか。

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Comments

Edit

ポール・ブリッツさん

梶龍雄って作品ごとの評価が固まってるようで、意外に固まっていないところがありませんか。A級はさすがに異存無しですが、その下のクラスは、けっこう人によって違っている気がします。
まあ、その中にあっても、『天才は善人を殺す』を推す人はあまりいませんが(苦笑)。

>面白い本ほど高値がつくんですねやっぱり……(^^;)

確かに。
Amazonとか、わかりやすくていいですね(笑)。

Posted at 19:23 on 08 18, 2013  by sugata

Edit

ちょっとこれはわたしも「物足りなかった」です(^^;)

最初に傑作群を読んだせいか、残念な感じばかりが先行してしまいました。

面白い本ほど高値がつくんですねやっぱり……(^^;)

Posted at 14:17 on 08 18, 2013  by ポール・ブリッツ

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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