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 本好きの人が抱えている悩みはいろいろあろうけれど、その代表的なところといえば、これはもう本の置き場所である。なかには図書館派の方もおられるだろうが、事情さえ許せば自分の好きな本に囲まれて暮らしたいというのが本音ではないだろうか。
 かくいう管理人も学生の頃から、常にこの悩みとは隣り合わせ。その頃は六畳一間のアパートとかだったから、そもそもスペースが全然ないのだけれど、まあ働き出してからは引っ越しを繰り返し、その度に本を置くスペースを拡充させてきた。そして十五年ほど前に家を買って、ようやくこういう悩みとはサヨナラかと思ったのだが。
 本とはいうのはなぜこうも増えるのでありましょうか。
 結局、十年ほどで家にすべて置くことを断念。なんとレンタル倉庫を借りて、そこに蔵書の一部を突っこむことにした。まあ、レンタル倉庫といっても一坪もないレンタルBOXというタイプなのだが、それでも段ボールにして八十箱ぐらいは楽に入るからとりあえずは重宝する。そして数年。
 本とはいうのはなぜこうも増えるのでありましょうか。
 歴史は繰り返す。レンタル倉庫の収容能力がついに限界に達し、この週末に同じタイプのレンタル倉庫をもうひとつ借りてしまったのであった。本の収納に特化した家に建て替えたいと、真剣に思う今日この頃である。


 さて近況報告はこのぐらいにして(笑)。

 本日の読了本は『変格探偵小説入門 奇想の遺産』。「入門」とは謳っているが、日本の変格探偵小説を俯瞰的に論じた評論であり、少なくともミステリ初心者が手軽に読めるような入門書ではない。もう少しタイトルは考えてもよかったのではないかな。

 変格探偵小説入門

 それはともかく。
 内容は十分に面白い。そもそも変格とは何か、という話になるわけだが、謎解きを主とした本格探偵小説に対し、謎解き以外の要素を重要視した探偵小説という認識でよいだろう。それは怪奇や幻想、SF、冒険などの要素を含んだ多様な小説群である。「本格」に対する「変格」、語感としては本格より一段低いランクというイメージをもった変格ではあるが、日本の探偵小説の歴史は変格に始まり、戦後まではむしろ圧倒的に主流であった。江戸川乱歩に横溝正史、小酒井不木、小栗虫太郎、夢野久作、海野十三、城昌幸、橘外男、渡辺温、久生十蘭などなど。なんと豪華な面子っていうか、戦前のメジャーな探偵作家はほとんど変格なのである。

 探偵小説を探偵小説として認知させた要素は、謎解きでありロジックの面白さである。これらの要素が主であったから、それまでの小説とは異なるジャンルを形成し、市民権を得た。その「謎解き」を主としないミステリは、どうやってミステリとして成立できるのか。
 「本格」と「変格」という語を作りだした甲賀三郎は、この疑問があるが故に、本格と変格を区別したかった。その小説的価値は認めつつも、根本的なところで探偵小説としては認めたくなかったのである。
 ただ、変格の中にも論理はあった。それが非合理の合理主義=非論理の論理とでもいうべきもので、既成文学の枠を超えようとする乱歩の傑作は正にそれを体現したものであった。

 本書はそんな矛盾した存在である変格探偵小説の姿を、あらためて認識するための一冊である。そのものの歴史だけではなく、いくつかの作品を例に挙げつつ、時代の証言を掘り起こし、ときには時代背景や一般文壇も絡め、その文学的意義を掘り下げていく。非常に陳腐な表現だが、面白くてためになるとはこういう本のことか。
 戦前探偵小説のファンならぜひ。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌





黒田さん

谷口氏がどの程度一般的な読者を想定しているかにもよりますが、本書に限っては岩波現代全書という性格を考えると、そこまで厳しい注文をしなくともよいのでは、とも思います。ましてや変格探偵小説なんていうテーマですし(苦笑)。
【2013/10/28 23:42】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

 極端に難解というわけでもありませんが、sugataさんや上村さんの仰る通り「ミステリ初心者が手軽に読めるような入門書」としては敷居が高いかも知れません。
 少なくとも「ちょっと読んでみるか」という感じで手に取ると脱落してしまうかも。
 私自身、恥ずかしながら完全に本書の趣旨を理解できているとは言えません・・・。

 amazonの四つ星レビューに挙げられている「論述が、研究者はともかく普通の読者には堅苦しく感じさせはしないか」、「戦前探偵小説の精神が現代のエンターテインメントに及ぼしている影響などを無理に総括に取り入れなくていい」との指摘、今後、谷口さんの著書が幅広い読者層を獲得するためのキーポイントになりそうです。
【2013/10/28 13:55】 URL | 黒田 #plKYnqhY[ 編集]

上村達成さん

はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。
とはいえ、なかなか手厳しいご意見ですね。
確かにご指摘のようなところはありますが、私は山風の件についても文章にしても、正直そこまで気にはなりませんでした。極端な場合ならともかく、これぐらいなら著者のスタンスでいいんじゃないでしょうか。
受け止め方も人それぞれということで。


>なにか先日2chで同業者や編集者を叩き続けたのが発覚したラノベ作家の事を思い出しました。

そんな無茶なラノベ作家さんがいたんですね。もちろん匿名だったんですよね?(笑) 
【2013/10/17 01:29】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

はじめまして。「探偵小説三昧」いつも楽しく拝見させてもらっています。お忙しい中でまめに更新されていらっしゃって素晴らしいなと思って読んでいます。

「変格探偵小説入門」
この本っておっしゃるとおりどうみても「入門」ではないですよね。
最近の評論書で思うのは、飯城勇三のクイーンのように自分が大好きな作家が一番偉いといわんばかりに、
強引なこじつけが見られることに違和感を感じてなりません。

この本も、飯城勇三ほどではありませんがよく読むと変格のその先に山田風太郎があって「風太郎が最もエライ」といっているように思わせる箇所があり、そこだけは「??」と感じました。

それから著者の友人らしい平山雄一が、twitterでこの本のAmazonのレビューにネチネチ言っているのを見かけましたが、僕もこの著者の論文っぽい文章の硬さにはそのレビューと同じ事を感じました。
☆4つで十分褒めてあるのに、なんなのでしょうね?
そこまで身内褒めしないと気が済まないのでしょうか。

なにか先日2chで同業者や編集者を叩き続けたのが発覚したラノベ作家の事を思い出しました。
【2013/10/16 12:36】 URL | 上村達成 #LNp9jijQ[ 編集]

少佐さん

確かに「謎」をどこに置くかが重要ですね。
それが密室だったりアリバイだったりすることもあれば、動機や人の心にまで踏み込むこともあるので、結局、世の小説のほとんどはミステリーということもできるんじゃないかと。さらにいえば、世の小説のほとんどは変格探偵小説ということもできるのであります<これは言い過ぎ(笑)
【2013/10/16 00:24】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

病膏肓に入る…(´;ω;`) 将来の「sugata文庫」開設を心待ちにしております。
私はあまり所有欲はないので、図書館で済ませたり、するっと電子書籍に宗旨変え出来ました。でも場所の制約という抑止力がなくなってしまったので、やはり積ん読は増える一方ですた…。

で、ご紹介の本ですが面白そうですね。いまも昔もミステリーと呼ばれる小説の大半は「変格」じゃないのかな。ミステリーとしての出来は「謎」をどう扱うかに尽きますよね。そこを敢えて論じる筆者のこだわりがちと気になります。
【2013/10/15 08:35】 URL | 少佐 #-[ 編集]

きみやすさん

そう、あえて二回書いております(笑)。
今では電子書籍という手もあるのですが、どうしても趣味の本は紙で読みたいんですよね。
【2013/10/15 01:23】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんばんは
ご無沙汰しております。
>本とはいうのはなぜこうも増えるのでありましょうか。
>本とはいうのはなぜこうも増えるのでありましょうか。

“重要なことなので二回書きました”
感じがたまりません(笑)。

本当に、読んでいて共感します。
【2013/10/15 01:12】 URL | きみやす #-[ 編集]

Ksbcさん

>不正な投稿と出ましたので、再度送信してしまいました。すいません。

了解です。二つめのコメントは削除しておきますね。

ところで谷口氏は国文学の先生で、現在は茨城大で教えているようです。探偵小説とか怪談とかを中心に研究されている方ですが、アカデミズムの世界では決して有利とはいえないこの手のジャンル。苦労も多いと思うのですが、その成果がこうして読めるのはありがたいことですね。
【2013/10/14 23:06】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

不正な投稿と出ましたので、再度送信してしまいました。すいません。
【2013/10/14 21:50】 URL | Ksbc #-[ 編集]

こんばんは。
先日の引っ越しで、泣く泣く数百冊を処分しましたが、それでもほとんどがダンボールに入ったまま屋根裏のスペースに…。
どうしてもアナログレコードとCDを出せるところに出さざるを得ず…。まあ、それはそれとして。
なんとも気になるタイトルの本でしょう。中身もですが、著者はどのような方なのでしょうか?このような本が岩波書店から出るとは、これまたすごい。

失礼しました。
【2013/10/14 21:47】 URL | Ksbc #-[ 編集]

ポール・ブリッツさん

さすがに貯めるだけではどうしようもないので、昨日も50冊ぐらいは売り飛ばしてきたんですが、まあ、焼け石に水っぽいですねw この二十年ぐらいはずっと悩みっぱなしです。


【2013/10/14 21:09】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

断捨離は文化の敵だ!

それはそうと、本どうしよう……(^_^;)
【2013/10/14 20:51】 URL | ポール・ブリッツ #0MyT0dLg[ 編集]















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