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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ダリル・デューク『新・刑事コロンボ/犯罪警報』

 今週末も家事に明け暮れつつ、合間をぬってお持ち帰りの仕事も進める。ううむ、まったく気持ちが安まらんな。

 というわけで気分転換に本の整理。自宅の本が飽和状態で先週やむなくレンタルBOXを追加したが、そちらに移すだけでなく、少しは処分もしておこうと、とりあえず段ボール一箱分を古書店に持っていく。約800円也。予想よりは多かったか。


 夜はDVDで『新・刑事コロンボ/犯罪警報』を視聴。通算五十七作目。監督はダリル・デューク。

 凶悪事件のドキュメンタリー番組「犯罪警報」で人気沸騰のホスト役ウェイド・アンダース。そこへ、かつて司会者の座を争ったバド・クラークが現れ、ウェイドが無名時代に出演したポルノ映画をもっていると告げる。バドは「犯罪警報」のホスト役を譲らなければ、自分のニュース番組でその事実を公表するという。
 ウェイドはオフィスのカメラでアリバイ工作をすると、バドを訪ね、毒薬入りの煙草をすり替えてバドを毒殺した。証拠となるビデオを回収し、暴露記事のデータもすり替え、ウェイドの未来は安泰かに思えたが……。

 新・刑事コロンボ/犯罪警報

 ううむ、これはきつい。スタイル自体は旧シリーズを踏まえたオーソドックスな倒叙もので、セレブな犯人をコロンボが少しずつ追い詰めるという展開は安心して見られるレベル。冗長なところは多いがまあ演出は悪くない。
 ただ、肝心の犯行が粗すぎて、これはコロンボが捜査しなくともいずれ犯人は簡単に捕まったに違いない。なんせウェイドの仕掛けたトリックのほとんどすべてにミスがあるのである。煙草の吸い殻のフィルター、大文字と小文字の違い、プリント用紙の指紋、カメラに映った背景の矛盾などなど。犯人が犯罪番組のホスト、しかも元警備のプロだというのに、これはいただけません。
 犯人の体たらくに引きずられるかのように、コロンボも精彩を欠く。ラストで示す決め手も単なる状況証拠だし、決定的な証拠はなかったように思えるのだが……。

 ちなみに犯人役のジョージ・ハミルトンは『5時30分の目撃者』以来の再登場。お年は召したが相変わらずダンディーで、セレブな犯人役としては理想的なタイプである。実際、本作での存在感もなかなかのものだが、いかんせん肝心の中身が悪かった。
 まあ『5時30分の目撃者』も傑作とはいえるほどの内容ではないのだが、どうもジョージ・ハミルトンはことコロンボものに関しては、あまりいい作品に恵まれていないようだ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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