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 中町信の諸作品が創元推理文庫で復刊され、なかなかの人気を集めているのは皆様ご存じのとおり。夏頃には遂に五冊目として『追憶の殺意』が文庫化されたので、本日はその感想など。
 ちなみに旧題は『自動車教習所殺人事件』。まあ、旧題もストレートすぎてあんまりな感じではあるが、改題の『追憶の殺意』も漠然としすぎてインパクトは薄い。
 とりあえず、そろそろ『〜の殺意』で揃えるのは止めてもいいんではないかな。シリーズ探偵がいるでもなし、内容が似ているわけでもなし。共通項のない作品群をむりやりまとめる必要はない。改題が悪いとは言わないが、やるならもう少し作品の内容を尊重した方がいいし、そもそも売るための施策ということを忘れないでほしいものだ。

 埼玉県岩槻市の川土手で、自動車教習所の配車係が死体で発見された。当初は事故として処理されたが、今度は教習所内で技能主任が殺害される事件が起こり、警察は関連性の究明を急ぐ。やがて浮かび上がる指導員や生徒の複雑な人間関係、指導員の不祥事。そして遂に三つめの事件が発生した。行方のわからなくなっていた指導員がマンションの駐車場で死体となって発見されたのである……。

 追憶の殺意

 一応は密室殺人事件という見せ場もあるのだけれど、そちらは大がかりなトリックではなく、むしろ犯人が明らかになってからのアリバイ崩しがメインとなる。また、アリバイ崩しを含めて様々な推論の繰り返しがあり、その過程を楽しむタイプの本格ミステリといえるだろう。
 とにかく一つの壁を突破したと思ったら、また次の壁が立ちはだかるという具合で、これをごく普通の刑事たちが持てる知識や経験を総動員し、ときには運にも助けられながらコツコツと進めていく。派手な展開とは無縁だけれど、これもまた知的興味を満たし、スリルを味わうひとつの形である。

 そんなわけで決して嫌いな作品ではないが、惜しむらくはここまで市井の人々で事件を構成することのもったいなさか。華がない、地味だと言われがちな中町作品。表面的な設定にはあまり凝ることをしないから、大技で魅せる『模倣の殺意』などの作品ならいざ知らず、本書のようなタイプではやはり損をしてしまう。
 本作に限らないが、もう少し個性的な警察官を配するとか、スケール感を大きくするとか、山っ気がもう少しあれば生前ブレイクもあったのではないだろうか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





Ksbcさん

私も時間がかかるとどうしても印象が薄くなって、つまらなく感じることが多くなりますね。個人的には400ページを超えるような長篇は要注意で、その場合はできるだけ1日100ページは読むようにしています。まあ、だいたいは失敗するんですが(笑)。

中町信の作風の理由は、時代、性格の両方ともあったとは思いますが……ううむ、実際のところはまったくわからないですね。
【2013/11/20 00:56】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

全くもって読書がはかどりません。
実はラロック『悪魔と警視庁』を読み終えたのですが、時間がかかりすぎて印象が薄まってしまい、いつか読み直さないと…というような体たらくぷりです。
『模倣の殺意』くらいやっちゃう人なのだから…書かれた時代なのでしょうか?それとも性格なのでしょうか?
きっと生真面目な人だったんでしょうね。
【2013/11/19 13:39】 URL | Ksbc #-[ 編集]















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