- Date: Sun 01 12 2013
- Category: 海外作家 オルツィ(バロネス)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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バロネス・オルツィ『レディ・モリーの事件簿』(論創海外ミステリ)
本日は論創海外ミステリから、バロネス・オルツィの『レディ・モリーの事件簿』を読む。歴史ロマン『紅はこべ』や隅の老人シリーズで知られるバロネス・オルツィが書いた、ミステリ史上初の女性警官を主人公にしたシリーズである。まずは収録作。
The Ninescore Mystery「ナインスコアの謎」
The Frewin Miniatures「フルーウィンの細密画」
The Irish-Tweed Coat「アイリッシュ・ツイードのコート」
The Fordwych Castle Mystery「フォードウィッチ館の秘密」
A Day's Folly「とある日の過ち」
A Castle in Brittany「ブルターニュの城」
A Christmas Tragedy「クリスマスの惨劇」
The Bag of Sand「砂嚢」
The Man in the Inverness Cape「インパネスの男」
The Woman in the Big Hat「大きな帽子の女」
Sir Jeremiah's Will「サージェレマイアの遺言書」
The End「終幕」

ミステリにおいては、隅の老人という確固たる成果を残したバロネス・オルツィ。だが実は他にもいくつかのシリーズキャラクターを手掛けている。
そのなかの一人が本書のレデイ・モリーで、何といっても女性警官を主人公にしたところが当時としては画期的であった。英国にあってもまだまだ男権社会で、女性警官は皆無の時代。時代を先取りするという意味では隅の老人シリーズを遙かに凌駕する、非常に意義のあるシリーズなのだ。
ただ残念なことに、ミステリ史的には意味があっても、ミステリの質としてはそれほどのものではない。雰囲気重視で楽しむならまだしも、事件や探偵という要素はあるが論理や謎解きという部分が不足しているので、通常の「ホームズのライヴァルたち」というイメージで読むと、期待は裏切られる。
「ホームズのライヴァルたち」という言葉を使ったが、本書は論創海外ミステリの中で「ホームズのライヴァルたち」という副題がつけられたシリーズでもある。確かに同時代に書かれた探偵ものではあるし、上で書いたように事件や探偵という表面的な要素は似ているのだけれど、本書を最後まで読むと、これはいわゆる「ホームズのライヴァルたち」ではないことがすぐにわかる。
作者の狙いは最初から「サージェレマイアの遺言書」+「終幕」というラストの二編にある。この二編でモリーの秘密(ついでにワトスン役のメアリーの秘密まで)が明らかになり、そしてそこで気付くわけだが、これはミステリなんかじゃなく、むしろ作者のもうひとつの代表作『紅はこべ』につながる歴史ロマン路線なのである。
まあ、そういう意外性を楽しむ手もないわけではないけれど(苦笑)、基本的にはミステリファンより、歴史ロマン系が好きという人の方が素直に楽しめるだろう。
The Ninescore Mystery「ナインスコアの謎」
The Frewin Miniatures「フルーウィンの細密画」
The Irish-Tweed Coat「アイリッシュ・ツイードのコート」
The Fordwych Castle Mystery「フォードウィッチ館の秘密」
A Day's Folly「とある日の過ち」
A Castle in Brittany「ブルターニュの城」
A Christmas Tragedy「クリスマスの惨劇」
The Bag of Sand「砂嚢」
The Man in the Inverness Cape「インパネスの男」
The Woman in the Big Hat「大きな帽子の女」
Sir Jeremiah's Will「サージェレマイアの遺言書」
The End「終幕」

ミステリにおいては、隅の老人という確固たる成果を残したバロネス・オルツィ。だが実は他にもいくつかのシリーズキャラクターを手掛けている。
そのなかの一人が本書のレデイ・モリーで、何といっても女性警官を主人公にしたところが当時としては画期的であった。英国にあってもまだまだ男権社会で、女性警官は皆無の時代。時代を先取りするという意味では隅の老人シリーズを遙かに凌駕する、非常に意義のあるシリーズなのだ。
ただ残念なことに、ミステリ史的には意味があっても、ミステリの質としてはそれほどのものではない。雰囲気重視で楽しむならまだしも、事件や探偵という要素はあるが論理や謎解きという部分が不足しているので、通常の「ホームズのライヴァルたち」というイメージで読むと、期待は裏切られる。
「ホームズのライヴァルたち」という言葉を使ったが、本書は論創海外ミステリの中で「ホームズのライヴァルたち」という副題がつけられたシリーズでもある。確かに同時代に書かれた探偵ものではあるし、上で書いたように事件や探偵という表面的な要素は似ているのだけれど、本書を最後まで読むと、これはいわゆる「ホームズのライヴァルたち」ではないことがすぐにわかる。
作者の狙いは最初から「サージェレマイアの遺言書」+「終幕」というラストの二編にある。この二編でモリーの秘密(ついでにワトスン役のメアリーの秘密まで)が明らかになり、そしてそこで気付くわけだが、これはミステリなんかじゃなく、むしろ作者のもうひとつの代表作『紅はこべ』につながる歴史ロマン路線なのである。
まあ、そういう意外性を楽しむ手もないわけではないけれど(苦笑)、基本的にはミステリファンより、歴史ロマン系が好きという人の方が素直に楽しめるだろう。
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この調子で、ホームズとライバルたちの邂逅を描くシリーズというのはどうでしょうか。楽しそうです。
マーチン・ヒューイットの全訳はさすがに難しいでしょうねぇ。けっこう量も多いし、創元の事件簿を読む限りはそこまでの価値があるかどうか。でも、出たら私は絶対買いますけどね(笑)。質にかかわらず、とりあえずすべて読んではみたい作家です。