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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ヴィンセント・マケヴィティ『新・刑事コロンボ/死者のギャンブル』

 『新・刑事コロンボ/死者のギャンブル』を視聴。監督はヴィンセント・マケヴィティ。
 本作はシリーズ通算六十一作目、新シリーズとしては十六作目にあたるのだが、やはり新シリーズの息切れ感は相当なものがある。とりあえずストーリーから。

 マフィアから多額の借金を抱えるハロルド。プロ・フットボールチームを経営する叔父から金を工面しようとするが、むげなく断られ、絶体絶命の危機に瀕していた。遂には遺産相続を狙って叔父殺害を企て、パイプ爆弾を叔父の車に仕掛けてしまう。
 ところが殺害実行の前に叔父が轢き逃げにあい、死亡したことで計画は大きく狂う。慌てたハロルドは車から爆弾を回収しようとするが、轢き逃げ捜査にきていたコロンボたちの目の前で車は爆発、庭師が命を落としてしまったのである。
 爆弾が既に死亡した叔父を狙ったものだと考えたコロンボはハロルドに目をつけ、捜査を開始。一方、叔父の遺産をアテにしていたハロルドだが、遺産がすべてもともと関係のあった叔母に渡ってしまい、今度は叔母に取り入ろうとするが……。

 新・刑事コロンボ/死者のギャンブル

 前作の『初夜に消えた花嫁』が完全にシリーズのパターンを無視した作品だっただけに、今度は手堅くオーソドックスな作りにするかと思いきや、本作はまた別の意味でシリーズのパターンを裏切る内容となった。
 ただ、本格ミステリーの魅力をどこかに置いてきてしまった前作とは異なり、本作は一応、本格のフォーマットを尊重しつつ捻りを加えたものだけに、狙いはわからないではない。
 とりあえず倒叙の形で犯行を進めつつも、それが未遂に終わって別の犯行が発生(この時点でもう一人の未知の犯人がいるのがミソ)、続いて当初の犯人の犯行が図らずも異なる形で実現してしまい、さらにはもうひとつ意外な形で犯行が行われるという結構は、結果はともかくとして意欲は買える。

 残念ながら新シリーズの常として完成度が低く、さらには捻りすぎのシナリオによってシリーズの持つ魅力がいくつも失われているのはいただけない。事件に関係ない人物の死や、知性も魅力も感じられない設定の犯人など、上品な知的ゲームを望んできた視聴者にはいささか辛いものがあるだろう。
 可能性を感じさせるプロットだけに、もう少し犯人の設定などをきちんと練れば良かったのになぁと思わせる一作。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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