- Date: Sat 11 01 2014
- Category: 海外作家 リッチー(ジャック)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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ジャック・リッチー『ジャック・リッチーのあの手この手』(ハヤカワミステリ)
本日の読了本は『ジャック・リッチーのあの手この手』。短編の名手ジャック・リッチーの短編集だが、オール初訳というのが大きなポイントである。
とはいえ過去には『クライム・マシン』、『10ドルだって大金だ』、『ダイアルAを回せ』という素晴らしい短編集が刊行されている。なんだかんだで代表的な作品は押さえていると思っていたのだが、いやいや認識不足もいいところだ。本書も落ち穂拾い的な要素などまったくないハイレベルな短編集であった。

「謀之巻(はかりごと)」
Body Check「儲けは山分け」
Take Another Look「寝た子を起こすな」
Alphabet Murders「ABC連続殺人事件」
The Message in the Message「もう一つのメッセージ」
Living by Degrees「学問の道」
McCoy’s Private Feud「マッコイ一等兵の南北戦争」
The Liechtenstein Flash「リヒテンシュタインの盗塁王」
「迷之巻(まよう)」
Going Down?「下ですか?」
The Quiet Eye「隠しカメラは知っていた」
Kill the Taste「味を隠せ」
Gemini74「ジェミニ74号でのチェス・ゲーム」
「戯之巻(たわむれ)」
The Golden Goose「金の卵」
By Child Undone「子供のお手柄」
Big Tony「ビッグ・トニーの三人娘」
Approximately Yours「ポンコツから愛をこめて」
「驚之巻(おどろき)」
Killing Zone「殺人境界線」
Businessman「最初の客」
The One to Do It「仇討ち」
When the Sheriff Walked「保安官が歩いた日」
「怪之巻(あやし)」
Ape Man「猿男」
The Rules of the Game「三つ目の願いごと」
Freddie「フレディー」
The Davenport「ダヴェンポート」
収録作は以上。ミステリはもちろんウェスタンからファンタジー、SFに至るまで幅広い作品が揃っており、これらを編者の小鷹信光氏は「謀之巻(はかりごと)」とか「迷之巻(まよう)」などというようなイメージで構成している。ジャンルで分けるというよりは、作品のタイプで分けるというか、ちょっと捻った作りである。まあ、あくまで編者のお遊びといったところなので、読む方としてはそれほど気にする必要もないけれど(笑)。
ところでそんな様々なジャンルやタイプを網羅するリッチー作品とはいえ、ひとつの傾向は確かにある。それが他の作家とジャック・リッチーを分ける大きな差でもある。
基本的にはジャック・リッチーの作風はそれほど突飛なものではない。あくまで犯罪者や犯罪に絡んだ出来事をベースにし、オチに捻りを利かせるといったパターンである。結構だけを見れば極めてオーソドックスなスタイルといえよう。
だが、その語り口や展開、結末に感じられる味わいが違う。何ともいえないとぼけた味、そこはかとないほのぼの感、あるいはトホホとしか言いようのない情けなさ。こういうものが渾然一体となった味わいこそが実はジャック・リッチー最大の特徴であり魅力なのである。そしてどういったジャンル、タイプの作品を描こうとも、この味わいを感じられるのが素晴らしい。
正直、本書中でこれはつまらないと思った作品は皆無である。おすすめ。
とはいえ過去には『クライム・マシン』、『10ドルだって大金だ』、『ダイアルAを回せ』という素晴らしい短編集が刊行されている。なんだかんだで代表的な作品は押さえていると思っていたのだが、いやいや認識不足もいいところだ。本書も落ち穂拾い的な要素などまったくないハイレベルな短編集であった。

「謀之巻(はかりごと)」
Body Check「儲けは山分け」
Take Another Look「寝た子を起こすな」
Alphabet Murders「ABC連続殺人事件」
The Message in the Message「もう一つのメッセージ」
Living by Degrees「学問の道」
McCoy’s Private Feud「マッコイ一等兵の南北戦争」
The Liechtenstein Flash「リヒテンシュタインの盗塁王」
「迷之巻(まよう)」
Going Down?「下ですか?」
The Quiet Eye「隠しカメラは知っていた」
Kill the Taste「味を隠せ」
Gemini74「ジェミニ74号でのチェス・ゲーム」
「戯之巻(たわむれ)」
The Golden Goose「金の卵」
By Child Undone「子供のお手柄」
Big Tony「ビッグ・トニーの三人娘」
Approximately Yours「ポンコツから愛をこめて」
「驚之巻(おどろき)」
Killing Zone「殺人境界線」
Businessman「最初の客」
The One to Do It「仇討ち」
When the Sheriff Walked「保安官が歩いた日」
「怪之巻(あやし)」
Ape Man「猿男」
The Rules of the Game「三つ目の願いごと」
Freddie「フレディー」
The Davenport「ダヴェンポート」
収録作は以上。ミステリはもちろんウェスタンからファンタジー、SFに至るまで幅広い作品が揃っており、これらを編者の小鷹信光氏は「謀之巻(はかりごと)」とか「迷之巻(まよう)」などというようなイメージで構成している。ジャンルで分けるというよりは、作品のタイプで分けるというか、ちょっと捻った作りである。まあ、あくまで編者のお遊びといったところなので、読む方としてはそれほど気にする必要もないけれど(笑)。
ところでそんな様々なジャンルやタイプを網羅するリッチー作品とはいえ、ひとつの傾向は確かにある。それが他の作家とジャック・リッチーを分ける大きな差でもある。
基本的にはジャック・リッチーの作風はそれほど突飛なものではない。あくまで犯罪者や犯罪に絡んだ出来事をベースにし、オチに捻りを利かせるといったパターンである。結構だけを見れば極めてオーソドックスなスタイルといえよう。
だが、その語り口や展開、結末に感じられる味わいが違う。何ともいえないとぼけた味、そこはかとないほのぼの感、あるいはトホホとしか言いようのない情けなさ。こういうものが渾然一体となった味わいこそが実はジャック・リッチー最大の特徴であり魅力なのである。そしてどういったジャンル、タイプの作品を描こうとも、この味わいを感じられるのが素晴らしい。
正直、本書中でこれはつまらないと思った作品は皆無である。おすすめ。
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>落ち込んで暗い気分になっていたときに読みました。
そういう時に読むとちょうどいい本だと思います。
ああ、わかります。そもそも良い本は、たとえ悲しい話であっても読んで元気になりますよね。
ジャック・リッチーの小説だと、決してカッコイイ主人公たちばかりではないですが、そこがかえって共感や人生の面白さを感じさせてくれて、それが読む人のエネルギーに転化しているように思います。