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E・C・R・ロラック『死のチェックメイト』(長崎出版)
第二次大戦下のロンドン。画家のブルース・マナトンと姉のロザンヌが暮らす住居兼アトリエには、その夜、三人の男が集まっていた。ブルースの絵のモデルである俳優のドロニエ、チェス仲間のマッケロンとキャヴェンディッシュである。そこへ突然、特別警察官が若い男を引き連れて姿を現した。その男が隣の家で老人を殺したというのだ。男は実は老人の孫で、自分が老人を訪ねたときには、既に老人は死んでいたと主張する。ブルースたちは特別警察官の横柄な態度に腹を立て、その若い男の方を信用するが……。
長崎出版から刊行された海外ミステリGem Collectionの一冊。なかなか渋い装丁の本だが、中身も負けじ劣らずの渋さなのが、E・C・R・ロラックの『死のチェックメイト』。
とにかく地味な作品である。冒頭こそやや奇妙な設定の元で幕を開けるが、途中は派手に盛り上がることもなく、警察の丹念かつ手堅い捜査がじっくりと描かれる。下手な翻訳ならかなり途中で退屈したはずだが、幸い文章は読みやすく、また、人物描写などもしっかりしているので思いのほか愉しみながら読み進めることができた。
心理的なトリックも悪くなく、この静かな作風にはちょうどマッチしている。ミステリにこういう感想はいかがなものかと思うが、とても真面目で好感が持てる、そんな作品である。
長崎出版から刊行された海外ミステリGem Collectionの一冊。なかなか渋い装丁の本だが、中身も負けじ劣らずの渋さなのが、E・C・R・ロラックの『死のチェックメイト』。
とにかく地味な作品である。冒頭こそやや奇妙な設定の元で幕を開けるが、途中は派手に盛り上がることもなく、警察の丹念かつ手堅い捜査がじっくりと描かれる。下手な翻訳ならかなり途中で退屈したはずだが、幸い文章は読みやすく、また、人物描写などもしっかりしているので思いのほか愉しみながら読み進めることができた。
心理的なトリックも悪くなく、この静かな作風にはちょうどマッチしている。ミステリにこういう感想はいかがなものかと思うが、とても真面目で好感が持てる、そんな作品である。
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Comments
Edit
わたしも「ジョン・ブラウンの死体」と本書を読みましたが、非常に地味な作風の人ですよね、この人。
落語でいうと「うまいけどフラがない」タイプの人ではないかと思います。作風はまるで違いますけれど、読後感としては中町信氏みたいに思いました。「トリックはよかったし退屈せずに読めたけど、小説としてどこが面白かったのかと聞かれると返答に窮する」という感じで……。
いやべつにロラック氏や中町氏を悪くいうわけではありませんが。
ある意味ジョン・ロード先生よりも「探偵小説らしい探偵小説」家かもしれないなあ。安心して読めるのはありがたいですが。
Posted at 19:13 on 04 05, 2009 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
ヤマっ気が無いんでしょうね。基本的にケレンが重視されるミステリでは、ときとしてマイナスに働くことが多いのでしょうが、ケレンばかりが先に立って自滅する昨今の作品よりはましでしょう(苦笑)。
Posted at 00:58 on 04 06, 2009 by sugata