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 マイクル・コナリーの『スケアクロウ』を、上巻に続いて下巻もイッキ読み。

 スケアクロウ(下)

 昨日の記事でも書いたが、コナリーはストーリーテリングが実に巧みなので基本的には退屈することがない。
 特に本作はLAタイムズの記者ジャック・マカヴォイとFBI捜査官レイチェル・ウォリングの二人をを主役に据えたシリーズであり、しかもジャックの一人称と犯人側の視点に立った三人称を交互に用い、犯人を最初から明らかにして対決色を強く押し出しているだけに、よりスピーディーでストーリー展開も動きが大きい。
 要はエンターテインメントに徹している面が強いのである。
 だから面白さだけを望むのなら文句はないのだけれど、逆にいうと軽さが目立ち、ボッシュ・シリーズに比べると内省的な描写が少なく、少々食い足りない嫌いはある。

 とはいえ、この辺は好みもあるので、そこまで言うのは贅沢というものだろう。
 むしろ気になるのは犯人側の設定だろう。コンピュータの天才でインターネットを自在に駆使するシリアルキラー〈スケアクロウ〉という素材が、あまりに既視感が強すぎるというか。
 それこそ90年代辺りからサイコスリラーやインターネットを使ったミステリーは雨後の筍のように登場してきたわけで、コナリーがいま(原作は2009年刊行)これをネタにして書く必要がどこまであったのかという疑問である。

 実は本書のテーマのひとつに、“新聞業界の衰退”というものがあり、優れた記者であるはずの主人公ジャック・マカヴォイがリストラされるという導入部から問題定義はされている。この衰退する新聞業界に対比する形で、IT業界の天才の犯罪を扱ったという可能性は高い。
 ただ、この辺りの問題は、二十年前ならいざ知らず、今では単純に紙とインターネットという図式だけで語れるわけでもないので、まとめ方としてはややお手軽な感じは否めないのだ。
 お手軽といえば犯人〈スケアクロウ〉の掘り下げも今回はちょっと甘い気が。

 結論。面白い作品ではあるのだけれど、全体にコクがやや不足気味。やはり次のボッシュもの『Nine Dragons』に期待しよう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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