- Date: Sat 15 02 2014
- Category: 映画・DVD 007
- Community: テーマ "ミステリー・サスペンス" ジャンル "映画"
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ジョン・グレン『007 ユア・アイズ・オンリー』
今週も大雪。先週の雪と違って水気が多いので、土曜には早くもシャーベット化が進んでいる。こういう状態の方が、重さや翌朝の凍結の点で怖いんだよな。ということで今週もお隣さんらと協力してせっせと雪かき。
DVDで『007 ユア・アイズ・オンリー』を消化。1981年に公開されたシリーズ十二作目で、監督はジョン・グレン。
こんな話。英国のスパイ船「セント・ジョージ」が地中海に仕掛けられた機雷によって沈没し、英国政府に激震が走る。なぜなら「セント・ジョージ」にはミサイルを自由に誘導する装置、ATACが搭載されていたからだ。
それを知ったソ連はATACを手に入れるべくある犯罪組織に依頼する。一方、英国政府は海洋考古学者ハブロック卿に引き上げを依頼していたが、ハブロック卿は引き上げの手伝いにやってきた娘の眼前で殺害される。事件は遂に007ジェームズ・ボンドに託されたが……。

監督のジョン・グレンは本作が監督デビュー作。以後『007 消されたライセンス 』までトータル五作の監督を務めることになるのだが、世評的にはいまひとつのイメージもある。まあ、その世評が適切かどうかはともかくとして、少なくとも『007 ユア・アイズ・オンリー』での功績は認めてあげるべきだろう。
本作では、荒唐無稽に走りすぎてとうとうSFまがいになってしまった前作『007 ムーンレイカー』の反省を受けたのか、実に現実的なスパイアクション映画に路線を変更している。だから秘密兵器はほとんど登場しないし、アクションシーンも特撮に頼らずスタントメイン。そのどれもがなかなか良い出来で、十分に及第点をあげられる。
とりわけ冒頭の亡き妻への墓参りシーンからヘリコプターによる宿敵プロフェルド(映画のなかでは言明されないが)との決着に至るオープニングは、コメディチックなところもあるけれどスリルと満足度はすこぶる高い。また、ラストのロッククライミングになるとこれがさらにエスカレート。007としては非常に地味なアクションシーンなのだけれど緊張感はガッツリ味わえる。定番のカースタントやスキーシーンもそつはない。
アクションだけではなく、ジェームズ・ボンドの立ち振る舞いも路線変更。なんと女好きのボンドがフィギュアスケートの女子選手を諫めたり、両親の復讐に燃える娘を諭したりと、妙に良識あるところを披露してくれる。かと思えばラストでは敵に対して非情な一面も見せるなど、これまでのボンド特有の“軽さ”とはやや距離が感じられるのである。
冒頭の亡き妻への墓参りのシーンからも感じられるのだが、やはりこれらアクションや設定の路線変更は、スーパーヒーローとしてのボンドから人間ボンドへの移行であり変容と見るのが妥当だろう。個人的にはどちらの路線もありだと思うのだが、怖いのはどっちつかずになることで、本作もそういう意味ではまだ万全というわけではない。そもそも性格付けまで変えるのであれば、ジェームズ・ボンドのキャストはここで変えるべきだったろうし。
とはいえトータルではまずまず楽しめる作品である。暇つぶしにロジャー・ムーアの007を観ようかというときなら、おすすめの一本。
DVDで『007 ユア・アイズ・オンリー』を消化。1981年に公開されたシリーズ十二作目で、監督はジョン・グレン。
こんな話。英国のスパイ船「セント・ジョージ」が地中海に仕掛けられた機雷によって沈没し、英国政府に激震が走る。なぜなら「セント・ジョージ」にはミサイルを自由に誘導する装置、ATACが搭載されていたからだ。
それを知ったソ連はATACを手に入れるべくある犯罪組織に依頼する。一方、英国政府は海洋考古学者ハブロック卿に引き上げを依頼していたが、ハブロック卿は引き上げの手伝いにやってきた娘の眼前で殺害される。事件は遂に007ジェームズ・ボンドに託されたが……。

監督のジョン・グレンは本作が監督デビュー作。以後『007 消されたライセンス 』までトータル五作の監督を務めることになるのだが、世評的にはいまひとつのイメージもある。まあ、その世評が適切かどうかはともかくとして、少なくとも『007 ユア・アイズ・オンリー』での功績は認めてあげるべきだろう。
本作では、荒唐無稽に走りすぎてとうとうSFまがいになってしまった前作『007 ムーンレイカー』の反省を受けたのか、実に現実的なスパイアクション映画に路線を変更している。だから秘密兵器はほとんど登場しないし、アクションシーンも特撮に頼らずスタントメイン。そのどれもがなかなか良い出来で、十分に及第点をあげられる。
とりわけ冒頭の亡き妻への墓参りシーンからヘリコプターによる宿敵プロフェルド(映画のなかでは言明されないが)との決着に至るオープニングは、コメディチックなところもあるけれどスリルと満足度はすこぶる高い。また、ラストのロッククライミングになるとこれがさらにエスカレート。007としては非常に地味なアクションシーンなのだけれど緊張感はガッツリ味わえる。定番のカースタントやスキーシーンもそつはない。
アクションだけではなく、ジェームズ・ボンドの立ち振る舞いも路線変更。なんと女好きのボンドがフィギュアスケートの女子選手を諫めたり、両親の復讐に燃える娘を諭したりと、妙に良識あるところを披露してくれる。かと思えばラストでは敵に対して非情な一面も見せるなど、これまでのボンド特有の“軽さ”とはやや距離が感じられるのである。
冒頭の亡き妻への墓参りのシーンからも感じられるのだが、やはりこれらアクションや設定の路線変更は、スーパーヒーローとしてのボンドから人間ボンドへの移行であり変容と見るのが妥当だろう。個人的にはどちらの路線もありだと思うのだが、怖いのはどっちつかずになることで、本作もそういう意味ではまだ万全というわけではない。そもそも性格付けまで変えるのであれば、ジェームズ・ボンドのキャストはここで変えるべきだったろうし。
とはいえトータルではまずまず楽しめる作品である。暇つぶしにロジャー・ムーアの007を観ようかというときなら、おすすめの一本。
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