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R・L・スティーヴンスン&L・オズボーン『難破船』(ハヤカワミステリ)
R・L・スティーヴンスンとL・オズボーンの合作『難破船』を読む。スティーヴンスンは言うまでもなく『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』で知られる英国を代表する作家。一方のオズボーンはスティーヴンスンの義理の息子である。
実業家の父の希望に背き、芸術で身を立てようとするラウドン・ドッド。そして芸術家としての道をあきらめ、実業家として立とうとするジム・ピンカートン。二人の青年はパリの学校で知り合い、お互いをリスペクトしつつも一度は袂を分かつ。だが、刻が過ぎ、ドッドの破産をきっかけに二人は再び出会い、アメリカで事業をスタートさせる。
そして事業が軌道に乗り始めたとき、二人のもとに南洋ミッドウェイ沖で座礁した難破船の情報が飛び込んできた。船が積んでいるという財宝を目当てに、二人は乾坤一擲の大勝負に出るが……。

帯の惹句が”大人版『宝島』”とあるので、てっきり血湧き肉躍る冒険小説かと思っていたが、これがまったく予想外の物語。難破船をめぐっての冒険要素もあるにはあるが、読み終わっての印象は、むしろ主人公ドッドの半生を語る大河小説の趣である。
しかもその舞台は大自然どころかビジネスの世界が主。実際、難破船がどうこうという話は全体の半分を超えないと登場しない始末である。
では本書がつまらなかったのかというと、まったくそんなことはなくて、これがけっこう楽しめる。スタイル自体はさすがに古めかしいものの、人間ドラマを丁寧に描いており、とりわけキャラクターの立たせ方はお見事。なんだビジネス小説か、というような偏見はさくっと捨てて、ドッドとジム、二人の生き方や考え方をじっくり味わいつつ読むのがよろしい。
また、スタイルが古めかしいとは書いたものの、実は当時流行し始めていたミステリのスタイルに拒否反応を示したスティーヴンスンが、あえて選んだ形らしい。まあ、日本でも探偵小説芸術論などで賑わった過去があったわけだが、やはり時代を考えると、当時の普通小説の書き手にとって、ミステリがある種の脅威になりつつあったことが想像できる。
ただ、そういう立ち位置を選んだはずのスティーヴンスンが、結局は本書でミステリ寄りの仕掛けを用いていることは興味深い。
まあ、ポケミスの一冊、大人版『宝島』というようなイメージをもって読み始めると逆効果な気はするけれど、いったんそういった先入観をチャラにしてしまえば、これはなかなか拾いものの一冊といえるだろう。
実業家の父の希望に背き、芸術で身を立てようとするラウドン・ドッド。そして芸術家としての道をあきらめ、実業家として立とうとするジム・ピンカートン。二人の青年はパリの学校で知り合い、お互いをリスペクトしつつも一度は袂を分かつ。だが、刻が過ぎ、ドッドの破産をきっかけに二人は再び出会い、アメリカで事業をスタートさせる。
そして事業が軌道に乗り始めたとき、二人のもとに南洋ミッドウェイ沖で座礁した難破船の情報が飛び込んできた。船が積んでいるという財宝を目当てに、二人は乾坤一擲の大勝負に出るが……。

帯の惹句が”大人版『宝島』”とあるので、てっきり血湧き肉躍る冒険小説かと思っていたが、これがまったく予想外の物語。難破船をめぐっての冒険要素もあるにはあるが、読み終わっての印象は、むしろ主人公ドッドの半生を語る大河小説の趣である。
しかもその舞台は大自然どころかビジネスの世界が主。実際、難破船がどうこうという話は全体の半分を超えないと登場しない始末である。
では本書がつまらなかったのかというと、まったくそんなことはなくて、これがけっこう楽しめる。スタイル自体はさすがに古めかしいものの、人間ドラマを丁寧に描いており、とりわけキャラクターの立たせ方はお見事。なんだビジネス小説か、というような偏見はさくっと捨てて、ドッドとジム、二人の生き方や考え方をじっくり味わいつつ読むのがよろしい。
また、スタイルが古めかしいとは書いたものの、実は当時流行し始めていたミステリのスタイルに拒否反応を示したスティーヴンスンが、あえて選んだ形らしい。まあ、日本でも探偵小説芸術論などで賑わった過去があったわけだが、やはり時代を考えると、当時の普通小説の書き手にとって、ミステリがある種の脅威になりつつあったことが想像できる。
ただ、そういう立ち位置を選んだはずのスティーヴンスンが、結局は本書でミステリ寄りの仕掛けを用いていることは興味深い。
まあ、ポケミスの一冊、大人版『宝島』というようなイメージをもって読み始めると逆効果な気はするけれど、いったんそういった先入観をチャラにしてしまえば、これはなかなか拾いものの一冊といえるだろう。
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