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 松本清張の『蒼い描点』を読む。
 1958年に刊行された『点と線』、『眼の壁』で大ブレイクした清張は、ここぞとばかりに多数の雑誌で連載を開始するが、『蒼い描点』もそんな時期に発表された一作。

 まずはストーリーから。
 文芸誌の新米編集者、椎原典子は、箱根宮ノ下にやってきた。現地の旅館に滞在している新進作家、村谷阿沙子の原稿を受け取るためであった。
 宿へ向かう途中のこと、典子は何かと評判のよくないライターの田倉義三と出会う。なぜか村谷阿沙子がいることを知っていた田倉に、典子は妙なものを感じるが、その翌朝、田倉と阿沙子らしき二人が会っているところを目撃し、思わず声をかけそびれてしまう。
 やがて、阿沙子から原稿を受け取った典子だったが、帰る直前になんと田倉の転落死という知らせが飛び込んでくる。さらには阿沙子の夫が失踪し、そして阿沙子までもが行方不明となる事件が連発する。
 典子は真相を突き止めるべく、先輩編集者の崎野竜夫とともに調査を開始した。

 蒼い描点

 本書がちょっと面白いのは、『点と線』、『眼の壁』のようないわゆる社会派ではなく、旅情を活かした軽めのサスペンスに仕上げられていることだ。いってみれば二時間ドラマやトラベルミステリーといった趣きである。
 それもそのはず、本書は雑誌「週刊明星」に連載されていた作品なのである。まあ、今の若い人に「週刊明星」といってもピンとこないかも知れないが、これは当時の若者向け総合誌(後には芸能雑誌となる)なのである。
 清張もそういった雑誌購読層を考えて、重めの社会派ではなく、若者に好まれそうなライトな作風にしたのであろうが、清張がこういう作品を残していたことにまず驚いた。

 しかし、さすがは清張である。たんに雰囲気作りのためだけに箱根を舞台にしたトラベルミステリーにしたのではない。やはりこの地でなければならない必然性がちゃんと準備されている。
 また、二時間ドラマというと安っぽいイメージがあるが、清張のそれは一筋縄ではいかない人間模様や背景が用意されているので、なるほど確かに雰囲気は軽いけれども、ミステリとしての手抜きはまったく感じられない。
 昭和の香りが感じられる個所が多々あるけれど(長距離電話や電報、タバコの描写など)、作品そのものは古さを感じさせないのも見事である。

 惜しいのはミステリとしての仕掛けがそれほどでもないことだ。偶然などの要素、簡単に人の秘密をべらべら話す聞き込みの証人たち、真相を最後の遺書に頼ったりするところなど、物足りない面もちらほら。
 まずまず楽しめる作品ではあるけれど、この時期の清張の作品としては、やはり一枚も二枚も落ちるのは否めないところだろう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





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【2014/10/15 17:16】 | #[ 編集]















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