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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ゴードン・ダグラス『放射能X』

 しばらくご無沙汰していたクラシック特撮映画を久しぶりに堪能する。ものは1953年に公開されたゴードン・ダグラス監督による『放射能X』。

 ニューメキシコ州でキャンピングカーが襲われ、唯一の生存者である少女は放心状態となって発見された。さらには付近の雑貨屋も同様に荒らされているのが発見される。両方の現場から共通したのは、盗まれた砂糖の跡、そして謎の足跡と蟻酸であった。保安官の依頼でやってきたFBI、そして農務省の昆虫学者らとの協力で、やがて犯行の原因が巨大なアリであることが判明するが……。

 放射能X

 うひゃあ。良い良いとは聞いていたが、まさかここまでとは。
 所詮は低予算によるB級映画、当時、流行していた放射能の影響による巨大生物もののひとつではあるのだが、作り手の姿勢や創意工夫によって、これが実にいい作品に仕上がっている。
 何といってもいいのは、大人が見ても納得できるようなしっかりした設定とストーリー、サスペンスをきちんと盛り込んでいることだろう。例えばアリの生態についても科学的にきちんと考証しており、それを踏まえての警察や軍隊の対処であったりするところなど、当たり前じゃないかと言われればそれまでだが、こういうことをやらない映画は現代でも山ほどあるのだ。
 また、巨大アリの登場させ方も演出の加減が上手くて、特撮だからと変に気張ることなく、オーソドックスに怖い感じを盛り上げているのがいい。隠しすぎず露出しすぎず、モンスター映画はこの加減が重要なのである。真偽のほどは知らぬが、この映画が後のモンスター映画に与えた影響は相当あるようで、今見ると既視感を覚えるシーンは確かに多い。

 もちろん映像的にはたかが知れている。それは時代ゆえ、予算ゆえにどうしようもないわけで、それをいってはお終いなのである。そこさえ割り引けば、意外なまでにしっかりしたサスペンス映画として楽しむことができるだろう。

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Comments
 
serpent seaさん

コメントありがとうございます。

>がんばれば何とかなりそうな感じで。

これ、同感です。モンスター映画や怪獣映画を観るときの個人的ポイントとして、人類はいかにしてモンスターの弱点を突きとめ、それに応じた対抗策を考え出すかが最大の見どころだと思っております。それがリアルであればあるほど(もちろん虚構ではあるのですが)、美しい。
そういう意味で本作での巨大アリはちゃんとアリの習性を踏まえて上での戦いになっているところが素晴らしいですね。
 
いつも楽しく読ませてもらってます!

「放射能X」本当に良いですよね。
現用の武器が通用するって設定が好きです。がんばれば何とかなりそうな感じで。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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