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 ムーミン・シリーズの三作目『たのしいムーミン一家』を読む。
 戦争の影響が色濃く反映された一、二作目に比べると、ずいぶんゆるい雰囲気になってきたなというのが第一印象。かつてアニメで見たようなエピソードもあちらこちらに見られ、いかにも正統派ムーミンを読んだという気にさせられた。

 物語はムーミン一家が冬眠から目覚めるところから幕を開ける。
 春の訪れにみなウキウキしているのだが、そんなさなか、ムーミントロールたちは「飛行おに」の落とした黒い帽子を発見する。それは被ったり、中に物を入れたりすると、人や物が変身してしまう不思議な帽子。
 案の定ムーミンたちはそれによって大騒ぎすることになるのだが、その帽子のドタバタを軸にして、各キャラクターのエピソードをつないでゆくという構成である。

 たのしいムーミン一家

 先に書いたように、物語には良い意味でのゆるさが出てきている。一、二作目のような直接的な危機が薄れたせいか、登場キャラクターたちはより自由に動きまわっている印象だ。
 その分、個性がいっそう際だった感もあり、口の悪さや態度の悪さはパワーアップ。これがまず楽しい。
 アニメのムーミンとのギャップに困惑する方々もいるようだが、こういう率直で人間くさい言動がむしろ楽しめるわけで、ただの感動的だったり教訓的だったりする童話とは一線を画している。だからこそ、大人向けみたいなイメージのある原作は、やはり子供にこそ読んでもらいたいし、そういう意味でも本作はもっともムーミンらしいムーミン物語といえるのかもしれない。

 もちろんそんなスレた読み方ではなく、普通に感じ入ってしまう印象的な描写も多いのでご安心を(笑)。
 例えばスナフキンとの別れは、旅立つ者だけでなく、残された者の自立を示唆してくれる。
 ムーミンパパの幼い頃が不幸であったことを暗示したり、そのパパがみんなを守るために立ち上がるシーンなどもちょっと感動的。
 世界で一番大きくてきれいな宝石をみんなで眺めるシーンでは、本当に美しいのは宝石なんかではなく、もっと別のものであることを教えてくれる。
 ひとつひとつのエピソードは無邪気なものだけれど、それでいて作者の意図が幾重にも織り込まれているイメージ。それがこのシリーズの最大の特徴なのかもしれない。とはいえ、まだシリーズ三作目。お楽しみはこれからだ。


テーマ:児童文学 - ジャンル:本・雑誌




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