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 梶龍雄の『殺人者にダイアルを』を読む。
 『天才は善人を殺す』に登場した探偵小説マニアの大学生グループが活躍するシリーズの続編である。『天才は善人を殺す』がいまひとつだったので、本作も最初からあまり期待はしていなかったのだが、さて、その結果は?

 三十三歳の若さで銀行の副支店長を務めていた間宮信夫が、軽井沢で服毒自殺をした。時を置かずして、恋人の上草千秋までもが東京で後追い自殺を図る。銀行での横領事件の疑惑もあったことから、警察では双方共に自殺で決着をみていたが、そこへ入ってきたのが千秋の他殺を指摘するタレコミ電話だった。警察では念のため坂坊刑事を調査に向かわせるが……。
 一方、千秋と同じバーでアルバイトをしていた女子大生の藤川京子。葬儀の手伝いで荷物を取りに千秋のアパートへ戻ったとき、部屋に侵入していた何ものかによって頭を殴打されてしまう。京子が所属する鶴瀬大学推理小説クラブの面々は、千秋の死に怪しいところがあるとみて、調査を開始することにした。

 殺人者にダイアルを

 本作の大きな特徴は二つある。ひとつは捜査する側が警察と大学探偵団の競争になっていること。いわば知恵比べというストーリー構成による面白さである。
 もうひとつは、自殺と思われていた事件の背景に、思いがけない組織的陰謀が潜んでいたという題材の面白さ。
 それぞれ見どころはあるのだけれど、このふたつが実は上手く噛み合っていないというか、相性が極めて悪い。事件自体は時代に即した経済犯罪であり、社会派的なアプローチすら可能なのだが、それに対するミステリの側が一昔前の青春推理小説ノリでいくため、互いに味を潰しあっているのが残念だ。

 特に気になったのは、それなりの大きな目的を持った組織犯罪の割には、やることなすことが素人すぎること。そもそもこのシリーズはベースがコミカルなので、ある程度はカリカチュアされるのは仕方ないとしても、組織犯罪を描くならもう少しそれに合った設定を作るべきではなかったか。
 また、ラストのどんでん返しは本来ならかなりのインパクトなのだが、何というか急にそこだけマジになられても、といった気分になってしまって、素直に驚けないのが辛い。

 結論。著者がこのシリーズをなぜもう一作書こうという気になったかは不明だが、『天才は善人を殺す』よりはまあいいとしても、全体的にはすこぶる低調。バランスの悪さ、焦点の不確かさで、これまで読んだ初期七長編(ジュヴナイル除く)の中ではブービー賞といったところである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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