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 連休を利用して遅めの夏休み。軽井沢まで足を伸ばしたが、相変わらず、いやますますペット連れにやさしい環境になっていて非常に助かる。
 現地では今さら観光でもないので、パワーアップした駅前のショッピングモールで買い物をしたり、旧軽で美味しいものを食べたりと、わりと通常の週末の延長のような感じ(苦笑)。車を走らせること自体が好きなので、いい気分転換にはなったけれど。


 三週間ほど前に読んだ『古書ミステリー倶楽部』がなかなか楽しかったので、続巻の『古書ミステリー倶楽部II』を読んでみる。もちろんビブリオミステリーを集めたアンソロジーという点は同じだが、収録作はやや新しいものが多い。

江戸川乱「口絵」
坂口安吾「アンゴウ」
泡坂妻夫「凶漢消失」
横田順彌「姿なき怪盗」
北原尚彦「愛書家倶楽部」
皆川博子「猫舌男爵」
山田風太郎「春本太平記」「随筆 ある古本屋」
土屋隆夫「異説・軽井沢心中」
乾くるみ「亡き者を偲ぶ日」「林雅賀のミステリ案内」
中井英夫「橅館の殺人」「随筆 カーの欠陥本」
菊池秀行「欠陥本」
逢坂剛「五本松の当惑」

 古書ミステリー倶楽部II

 巻頭を飾る坂口安吾の「アンゴウ」は、古書に挟まっていた便箋が妻と友人の不倫疑惑を招くが、ラストには感動的な結末が待っている。ミステリ的な楽しみはもちろんだが、魂の救済と人間の存在について考えさせるのがさすがである。

 SFであろうがファンタジーであろうが、一定の世界観やルールを構築してあるなら、どんな物語でも本格として成立するという実例のひとつが「凶漢消失」。ただし、あまりに変化球すぎる本作においては、「やられた」という感じは受けず、人によっては駄作扱いかもしれない。管理人としてはぎりぎり許容範囲(笑)。

 正に古書店でなければ成立しない"事件"を描く好篇が「姿なき怪盗」。ミステリではなく"事件”と書いたのは、最終的に最大の謎が明らかにされないまま終わり、ミステリとしては読めないから。読後感は良いけれども、消化不良な感も残る。

 「愛書家倶楽部」はシャーロキアンにして古書収集家としても知られる北原尚彦の作品。狙いはすごく面白いが、狂気の部分がそれほど伝わってこなくて、少々物足りない。語り口等がクリアすぎて、奇妙な味やホラーになりきれていない印象。

 皆川博子の「猫舌男爵」は初読。そもそも皆川博子をあまり読んでいないので、こんなものを書いていたのかという驚きがまずあるのだが、それにしても馬鹿をやるならここまでやらなければという徹底ぶりがすごい。

 この手の作品なら山田風太郎も負けてはいない。「春本太平記」はパッとしない作家や絵描きが金のために書いたエロ本の引き起こす騒動の顛末。面白いが山風にしてはちょっと落ちるか。

 「異説・軽井沢心中」は有島武郎の心中事件をネタにした一篇。題材は興味深いのだけれども、書かれた時代等を顧慮しても期待するほどの驚きはなく、やや物足りない。

 乾くるみの「亡き者を偲ぶ日」は蒼林堂古書店シリーズから。古書の買い取りから浮かび上がった謎にはちょっぴり感動的な真相が……という一篇。いわゆる日常の謎だが、その割りには作為的すぎてあまり入り込めない。

 「橅館の殺人」は小品だがとにかくセンスがいい。下手な作家がこういうものを書くと自己満足に終わってしまいがちだが、さすが中井英夫。そのうちしっかり読んでみたい作家さんである。

 菊池秀行という名前にまず驚かされるわけで、スーパーバイオレンスホラーの巨匠が古本をネタに小説を書いていたのかというこの衝撃(苦笑)。「欠陥本」はお得意の超自然要素も取り入れつつ、コミカルな面やハートウォームな面もそれぞれ含めて楽しめた。それにしても久しぶりに菊池秀行の作品を読んだなぁ。ン十年ぶり。

 逢坂剛も久しぶりに読む作家だが、デビューの1980年から90年半ばぐらいまでは全作読んでいたぐらいお気に入りであった。もちろん当時は冒険小説やハードボイルド系の作家として認識していたが、本書収録の「五本松の当惑」はライトな警察小説という趣き。どうやらシリーズらしく、警察署の面々のキャラクターに馴染みがあればもっと楽しめたか。でも悪い作品ではない。

 前巻同様、全体としては十分に楽しめるが、どちらかというと日常系かつラストがさわやかな作品が多い印象。特に古本ということでなく、書物を愛する人全般におすすめできる一冊である。
 個人的には「アンゴウ」「猫舌男爵」が突出している感じで楽しめた。





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