- Date: Mon 15 09 2014
- Category: 映画・DVD SF・ファンタジー
- Community: テーマ "特撮・SF・ファンタジー映画" ジャンル "映画"
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ジェイムズ・ホエール『透明人間』
DVDでジェイムズ・ホエール監督の『透明人間』を視聴。原作はもちろんH・G・ウエルズの同名小説。ストーリーや設定はそこそこ活かされているようだが、なんせ小説を読んだのはかなり昔のことなので、ちょっと記憶はあやふやである(苦笑)。
ロンドンからほど近い片田舎の村アイピング。雪の降る夜、その宿屋にサングラスと包帯で顔を隠した奇妙な男が現れた。男は部屋に入ってもコートや帽子も脱ごうとせず、食事を頼んだあとは、以後自分のじゃまをするなと宿屋の女将に告げ、あとは部屋にこもってひたすら薬品を使った実験に取り組んでいた。
だが宿代を滞らせたことで宿の主人と言い争いになった男は、主人を階段から突き落とす。ついには警察が呼ばれたが、男は村人を相手に大暴れし、いずこへ逃げ去ってしまった。
一方、ロンドンにあるクランレー博士の研究室。博士は助手のケンプ、娘のフローラと共に、一ヶ月前に失踪した助手グリフィンについて頭を悩ませていた。何の連絡もなく消えたこと、怪しい実験に手を染めていたことなどから、クランレーとケンプは既にあきらめムードだが、フローラだけはグリフィンを信じていた……。

モンスターSF映画としては古典中の古典。なんせ1933年の映画だから、ある程度心の準備をしているのだが、これが思ったよりも全然楽しめた。
もちろん今の基準でどうこう言うべきではなく、"当時の映画にすれば"という但し書きはつくけれど、それにしてもサスペンスの盛り上げ方、透明人間の演出、科学的考証、テーマの掘り下げなど、どれをとってもなかなかのものだ。
特に感心したのは透明人間のキャラクターである。
モンスターものとしては、体が透けようがどうしようが、中身は結局ただの人間というところがウィークポイント。これを徹底したマッドサイエンティストにすることで、とてつもなく不気味な雰囲気を盛り上げることによってカバーしている。
自説を唱えているうちにだんだん高揚していき、高笑いに至る様は、クロード・レインズの声の演技も相まって圧巻である。
また、透明人間として暮らすためにどういう苦労があるか、あるいは捕まえるためにどんな工夫をするのか、意外に細かくやっているのも好印象。こういう点は原作ではあまり言及していなかったと思うのだが(というか、それらはウエルズにとっては些末なことだったのだろう)、映画のこうした方向性は十分にありだろう。なんせ娯楽のための映画なのである。
ちなみに透明人間をネタにした小説というと、ウエルズの『透明人間』以外ではH・F・セイント『透明人間の告白』ぐらいしか思い浮かばない。吸血鬼やフランケンシュタインは何だかんだとあるけれども、やはりビジュアルがないぶん扱いは難しいのかね(苦笑)。
あ、短篇だと香山滋の「白蛾」もあったか。
ロンドンからほど近い片田舎の村アイピング。雪の降る夜、その宿屋にサングラスと包帯で顔を隠した奇妙な男が現れた。男は部屋に入ってもコートや帽子も脱ごうとせず、食事を頼んだあとは、以後自分のじゃまをするなと宿屋の女将に告げ、あとは部屋にこもってひたすら薬品を使った実験に取り組んでいた。
だが宿代を滞らせたことで宿の主人と言い争いになった男は、主人を階段から突き落とす。ついには警察が呼ばれたが、男は村人を相手に大暴れし、いずこへ逃げ去ってしまった。
一方、ロンドンにあるクランレー博士の研究室。博士は助手のケンプ、娘のフローラと共に、一ヶ月前に失踪した助手グリフィンについて頭を悩ませていた。何の連絡もなく消えたこと、怪しい実験に手を染めていたことなどから、クランレーとケンプは既にあきらめムードだが、フローラだけはグリフィンを信じていた……。

モンスターSF映画としては古典中の古典。なんせ1933年の映画だから、ある程度心の準備をしているのだが、これが思ったよりも全然楽しめた。
もちろん今の基準でどうこう言うべきではなく、"当時の映画にすれば"という但し書きはつくけれど、それにしてもサスペンスの盛り上げ方、透明人間の演出、科学的考証、テーマの掘り下げなど、どれをとってもなかなかのものだ。
特に感心したのは透明人間のキャラクターである。
モンスターものとしては、体が透けようがどうしようが、中身は結局ただの人間というところがウィークポイント。これを徹底したマッドサイエンティストにすることで、とてつもなく不気味な雰囲気を盛り上げることによってカバーしている。
自説を唱えているうちにだんだん高揚していき、高笑いに至る様は、クロード・レインズの声の演技も相まって圧巻である。
また、透明人間として暮らすためにどういう苦労があるか、あるいは捕まえるためにどんな工夫をするのか、意外に細かくやっているのも好印象。こういう点は原作ではあまり言及していなかったと思うのだが(というか、それらはウエルズにとっては些末なことだったのだろう)、映画のこうした方向性は十分にありだろう。なんせ娯楽のための映画なのである。
ちなみに透明人間をネタにした小説というと、ウエルズの『透明人間』以外ではH・F・セイント『透明人間の告白』ぐらいしか思い浮かばない。吸血鬼やフランケンシュタインは何だかんだとあるけれども、やはりビジュアルがないぶん扱いは難しいのかね(苦笑)。
あ、短篇だと香山滋の「白蛾」もあったか。
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>モーパッサンの「オルラ」が、「透明」というより「見えない」って感じですが、それっぽかったです。怖かった。
ああ、確かに「オルラ」は「透明」というより「見えない何か」というイメージですね。最初からそういう存在だと、透明ということに対しての願望なり葛藤なりが薄れてしまうので、小説としては別物のテーマになってしまうのが難しいところです。
実際、「オルラ」も主人公の壊れていく過程が見どころの小説ですものね。